フェイスブックの仮想通貨「リブラ」誕生による影響と課題

リブラ誕生は我々の生活にどのような変化をもたらすか

リブラ誕生は我々の生活にどのような変化をもたらすか(リブラ公式HPより)

 フェイスブックの仮想通貨「リブラ」が、世界中で様々な議論を巻き起こしている。リブラへの期待を寄せる声も聞かれる一方、10月のG20ではリブラの発行を認めないという合意がされるなど、どちらかというと道のりは前途多難といえるだろう。これだけ注目を集めるリブラだが、はたして我々の生活にどのような変化を与えるのだろうか。11月に開催されたCFA(Chartered Financial Analyst)Japan Book Clubのトライアルではホワイトペーパーをもとに議論した。

 # # #
 ブッククラブのコメントや議論を紹介する前に、リブラのメリット・デメリットを簡単に見ておこう。

【メリット】

  • 低コストの送金
  • 銀行口座を持てない人々へのサービス(海外では銀行口座を簡単に持てない人もいる)
  • 資金移動の動きが明瞭で、課税への透明性が高まる

【デメリット】

  • KYC(Know Your Customer)
  • 個人情報の流出、悪用懸念
  • 資金洗浄(マネーロンダリング)

 また、リブラはステーブルコインであることも特徴。ステーブルコインとは法定通貨の価値に裏付けとし、価格が固定(安定)される通貨を指す。例えば1リブラ=1ドルとして流通する可能性があるのだ(複数の通貨価格と連動した「バスケット通貨」として、リブラの価格を安定させ流通するさせる仕組みで運用する予定)。

リブラの評価と金融業の変化

 リブラはフェイスブックが発行体となるが、「リブラプロジェクト」には決済、通信、ブロックチェーンなどの企業も加盟している。

 フェイスブックが実際にリブラを発行できるか?といった不透明な点が現状は多いものの、現状のリブラに対する評価として経済や金融市場を変えるインパクトとなるだろう、というコメントは多かった。リブラプロジェクトに参加する企業の事業発展には注目で、未来の金融像を占うターニングポイントになるとも考えられる。

参加企業の企業価値分析が重要
Should keep close eyes on those companies

 リブラがフェイスブックにもたらす収益はどのようなものだろうか? まず考えられるのが、リブラの利用者データを活用したビジネス。仮想通貨のブロックチェーン技術は、通貨の流れが見えやすくなり、経済構造を分析しやすくなる。20億以上のユーザーを抱えるフェイスブックから誕生するリブラは、ビッグデータビジネスとしても目覚ましい飛躍を遂げる可能性がある。

 ソニーは電化製品の製造から金融業へ、通販大手アマゾンはAWSとVCベンチャーキャピタル、通信大手ソフトバンクがビジョンファンドを設立するなど、近年は他業種からの金融業界進出が目立つ。アマゾン創業者ジェフ・ベゾスもヘッジファンドから起業したように、世界のトップランナーには国際金融の知識を兼ね備えた人物が多くなっている印象だ。

 金融とIT産業の融合は、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が先頭となり、今後も加速していくと思われる。第4次産業革命としてAIやビックデータ、IoTなどが注目されており、仮想空間と現実空間の境界線が大きく変化するときも近い。リブラはそうした「ITと金融の融合」の試金石ではないか、と議論の熱は深まった。

 リブラの前段としてなのか、フェイスブックは「フェイスブックペイ」という決済サービスを発表した。決済サービスや電子マネーの急速な普及により、現金の役割も変化を迫られている。電子マネーの流通は、最終的には仮想通貨の流通に寄与するだろう。

 ファイスブックが描く大河は世界規模だ。

リブラへの懸念点と課題

 10月に開催されたG20でリブラに対して辛辣な意見が飛び交ったように、リブラが広く使われるまでの課題は山積み。ブッククラブでは政府との対話が重要となる、というコメントも多くあった。

I have Not much concerns here in developed nations
It can be HUGE
Intervention of governments

 リブラのデメリットとして、KYC、個人情報の流出・悪用懸念、資金洗浄(マネーロンダリング)などを先ほど挙げたが、ブッククラブでは中央銀行がどのような規制・役割を果たすのかが論点になった。

 個人間に仮想通貨が浸透してゆくことで、中央銀行が機能しなくなることも考えられる。仮想通貨の発行体である民間企業が通貨の流通などをある程度コントロールできるようになると、中央銀行主体とした金融政策は従来のように統制をとれるのかは疑問が残る。

 また、新興国で通貨の信頼が揺らぎかねない。エジプトでは自国通貨よりドルが信用される事態も実際に起きている。従来の通貨から仮想通貨への変革は、経済構造に限らず、政府機能にまで影響を及ぼす可能性がある。

リブラがもたらす仕事への変化、影響、未来

Probably we get easier access to emerging nation
I can want to get paid in Libra
Innovation always

 リブラが我々の生活にどのような影響を及ぼすのだろうか。ブッククラブのコメントや議論からは、リブラにより両替の手間がなくなり、新興国へのアクセスが容易になるなど、リブラを利用した世界への期待が多く感じられた。一方で、リブラのリリースは大きなインパクトはなく、影響は軽微だろうという意見も見られた。

 革新は常に起きるものであり、何事も追いかけてゆく姿勢が重要だろう。投資環境においては、従来の伝統的な市場と仮想通貨市場が融和してゆくことで、金融データ解析の判断が変化してゆき、統計によるアプローチそのものが変化してゆくと考えられる。365日24時間止まらない仮想通貨の世界において、データ分析の環境が変われば、また新たな世界が開かれるだろう。

 今後もフェイスブックの動向、仮想通貨リブラへの関心は高く、経済、金融、社会への変化を捉えてゆくことが大切だ。仮想通貨が創造するデジタル世界は川や山など自然体系を生み出すごとく、生存競争を繰り返されながら、新たな1ページが歴史に刻まれてゆく。

来月のマーケット展望

 ブッククラブメンバーの2019年12月のマーケット展望を紹介する(ブッククラブ開催時点)。現役トレーダーで当メディア編集部の「天空の狐」が各市場の展望状況も解説する。

 # # #
 11月に入り、プロ投資家たちは来年のポートフォリオを完成させ、再確認する時期。市場参加者の投資目線が定まるころでもあり、今回の予想は目先参考になります。全体に株式市場はリスクオンの上昇予想、FX市場と商品市場はBOX予想、仮想通貨市場も中立予想が多かったです。

NYダウ

 楽観と中立が中心。ダウは歴史的高値圏で推移しながらも、12月は調整の展開を予想します。

  • Optimistic
  • Neutral
  • Pessimistic
NYダウ

66%


17%


17%

日経225

 リスクオンで楽観的な見通し。一方で、中立と悲観の声もあり、両方のトレンドへの備えが重要です。

  • Optimistic
  • Neutral
  • Pessimistic
日経225

60%


20%


20%

EUR/USD

 中立的にBOX相場を予想。大きなトレンドは形成できずに横ばいの展開が続くでしょう。

  • Optimistic
  • Neutral
  • Pessimistic
EUR/USD

0%


80%


20%

USD/JPY

 中立的にBOX相場を予想。楽観と悲観の声もあり、明確な方向感は出ない展開が想定されます。

  • Optimistic
  • Neutral
  • Pessimistic
USD/JPY

20%


60%


20%

金価格

 楽観と中立の予想が多く、金価格は全体調整しながらリスクヘッジ対象として上昇すると予想します。

  • Optimistic
  • Neutral
  • Pessimistic
金価格

40%


40%


20%

WTI原油価格

 中立の予想です。BOX展開になり調整を待つ展開。

  • Optimistic
  • Neutral
  • Pessimistic
WTI原油価格

0%


80%


20%

BTC/JPY

 中立が優勢ながら、悲観と楽観も交じりました。現在の緩やかな下落は市場参加者はトレンド予想が困難と判断し、ポジションを投げていることが原因とも考えられます。

  • Optimistic
  • Neutral
  • Pessimistic
BTC/JPY

25%


50%


25%

総評

 ブッククラブのマーケット予想は、12月に向けての予想です。12月は例年通り、市場参加者が減り、市場のボラティリティが低下してゆくなか、アルゴリズムによる自動売買を中心とする相場展開となるでしょう。

 今年の相場を振り返り、反省しながら、来年の見通しをゆっくり考えてゆく時期でもあります。

会場

 ブッククラブが開催された会場は日本橋茅場町の「CAFE SALVADOR BUSINESS SALON」。カフェとビジネスサロンの両方を兼ね備え、ビジネスミーティングに最適なソファ席、ひとり向けのデスク、セミナーに利用できる会場など、さまざまなスペース・環境を提供している。公式サイトはこちら

keyboard_arrow_up