摘草 2月中旬から1か月のシナリオ分析

【目次】

  • グローバルマーケットの考察
    1. マーケットメモ
    2. NEWS PICK OUT
  • グローバルマーケットのシナリオ分析
    1. 直近1か月の投資スタンス
    2. ヘッジファンドの投資指針
    3. メインシナリオ
    4. カウンターシナリオ
    5. サブ・カウンターシナリオ
    6. セカンド・カウンターシナリオ

グローバルマーケットの考察

【主要銘柄の先月比変動幅】

  • ■ダウ:+1.24%
  • ■日経:+2.69%
  • ■ドル円:+0.67%
  • ■ビットコイン円:+23.13%
  • ■ゴールド:+0.70%
  • ■原油:-15.90%
  • ■TLT(債券):+5.62%

 リスクオンでダウ、日経、ドル円、ビットコイン円、ゴールドは上昇継続。原油は50付近で採算ラインまで下落展開。市場は新型コロナウィルスによる調整から反発気配。

 Fear&Greed Indexから80台から57台となり、リスクオンは一旦ブレーキです。ゴールドの力強い上昇は、突発なリスクオフにも備えた展開です。全体に株式市場が主役で市場をけん引、他市場や新興国にもリスクオンが波及するのを待っている地合いです。

【参考】
Fear&Greed Index(リスクオン、リスクオフの判断)
https://money.cnn.com/data/fear-and-greed/

マーケットメモ

【マーケットメモ(短中期)】

  • ■世界的な金融緩和期待、米中貿易交渉の進展、リスクオン上昇
  • ■米中貿易協定、第2段階が不安定要素、中東地政学リスク、香港情勢、新型コロナウィルスの経済への影響、リスクオフ下落
  • ■2019年9月からのマーケット変化が重要
  • ■リスクオン優勢の構図、ゴールド続伸
  • ■ビットコイン半減期、5月頃まで買いの思惑

【マーケットメモ(長期)】

  • ■世界経済成長の減速から回復局面へ
  • ■金融緩和政策の期待と利食い
  • ■米中貿易摩擦での混沌を織り込む
  • ■株価動向とTLT(債券)動向のアンバランスに警戒感
  • ■中央銀行デジタル通貨の調査、検証

 短期的に新型コロナウィルスによる調整呼び込みとなり、経済影響への懸念もありながら、現在は新たな投資先を探す移行期間です。債券市場から目線を変え、バリュー株や循環株、新興国市場へ投資が波及するかどうか注目です。中央銀行のデジタル通貨の調査など超長期で経済の主体を変える動向でもあり、注意が必要です。当面はリスクオンでの上目線が中心に、下落したら拾うことの繰り返しです。

【参考】
Composite leading indicator(OECD景気先行指数)
https://data.oecd.org/leadind/composite-leading-indicator-cli.htm
【参考】
S&Pグローバル総合指数(米ドル建て)
https://japanese.spindices.com/indices/equity/sp-global-bmi-usd
【参考】
VIX(恐怖指数)
http://www.cboe.com/vix/
【参考】
CFTC (米商品先物取引委員会)VIX FUTURES (恐怖指数 先物)
https://www.quandl.com/data/CFTC/1170E1_F_L_ALL-Commitment-of-Traders-VIX-FUTURES-E-Futures-Only-Legacy-Format-1170E1

 OECD景気先行指数データは半年先の相場転換を先行する指標といわれています。現在は100を下回り、99付近で横ばいに推移していることから、(1)景気停滞のシナリオ、(2)底入れで景気回復シナリオの2つを予想できます。現在の市場局面を鑑みると、景気回復のシナリオが優勢となります。

 また、中国、イギリス、ドイツは景気底入れ観測となり、回復反発シナリオが優勢です。

 S&Pグローバル総合指数(米ドル建て)は、月初来リターン+2.51%とリスクオンによる上昇展開を見せました。S&P新興国総合指数(中国A株含む、米ドル建て)は+0.33%、S&P欧州大中型指数(米ドル建て)が+2.18%と、新興国や欧州への投資波及が伝わり、各国景気懸念は軽減され底打ちしたようにも思えます。

 VIX(恐怖指数)は月間15付近で推移。先月比+36.72%で、移動平均15.99付近での推移、新型コロナウィルスでVIX指数は19付近まで急騰しましたが、現在は落ち着ています。

 一方でVIX先物はショートポジション残高が過去最高水準を更新推移しており、リスクオフ転換への警戒感も残ります。そのため、ネットショートの動向を注視します。

 マーケットメモの総括として、各国から底入れシグナルが出ています。上昇目線が中心です。もちろん急落にも警戒しながらですが、現在は新たな投資先を探す移行期間とも考えられます。

NEWS PICK OUT

 2月7日にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の2019年12月末時点での運用資産額が、約169兆円になったとの報道がありました。

 マーケットは米中貿易協議の第1段階の合意に好感を抱いており、GPIFなども影響した継続的な株高、円安、外貨建て資産は、長期的な下支え材料として続きます。心配されている消費増税の景気下振れ、オリンピック後の景気などは短期の下落調整と判断します。長期的には回復期待が持てるでしょう。

 2月7日、オーストラリア準備銀行(RBA)は短期成長率の見通しを下方修正しました。個人的には国内の山火事、新型コロナウィルスの影響などは短期的な影響にとどまる予想で、のちのち回復してくるでしょう。金利は現行水準で据え置き、緩和姿勢に変化が見られました。基本姿勢は各国中央銀行の緩和期待は継続しており、RBAも底入れの印象が強まります。

グローバルマーケットのシナリオ分析

直近1か月の投資スタンス

 相場への目線は上昇を意識します。目先は新型コロナウィルスの騒動で調整が見られ、不安定な地合いです。株高を主体に投資構成は変わらず、反発回復を待つ地合いです。ポートフォリオも定まり、中長期のスタンスはしっかりしています。パニック的な売りでの調整幅とポジションサイズを注意したいです。

 摘草、春から夏まで収穫を待ちたい。弱い気持ちは引き抜いて、強い気持ちで下落の恐怖に打ち勝ちたい、そんな地合いです。

ヘッジファンドの投資指針

【ヘッジファンドの投資指針】

  • ■先進国と新興国のマクロ景気サイクルの変化
  • ■株式市場を中心に買い戦略、ロング&ショート、マクロ戦略、モルティー戦略
  • ■イベントやニュースによる突発的な動きに対応する短期の逆張りトレード戦略
  • ■自動売買は例年並みのパフォーマンス
  • ■リスクヘッジで商品市場を買い戦略、調整幅に注意です
  • ■商品市場と仮想通貨は低迷

 ファンド、ヘッジファンド、インディケーターの順でパフォーマンスを見ていくと、今後の投資戦略が見えてきます。ヘッジが重要な展開であり、万が一相場が変わってもいいように対応を心掛けたいです。

 The Berkshire Hathaway Portfolioの1か月のリターンは-3.98% 、S&P500(^GSPC)が+1.91%となり、個別は低迷しながら、インデックスは顕著となり、全体の調整回復を待つ地合いです。

【参考】
The Berkshire Hathaway Portfolio(バフェットのファンド)
https://finance.yahoo.com/u/yahoo-finance/watchlists/the-berkshire-hathaway-portfolio

 Eurekahedge Hedge Fund Indexは1月の評価が+0.14%のリターンです。12月に比べて低迷は短期的な影響と見ています。リスクオンへの回復を待ちます。自動売買Eurekahedge AI Hedge Fund Indexでは、12月が1.42%と平均的な結果です。仮想通貨はEurekahedge Crypto-Currency Hedge Fund Indexでの12月の評価が-6.27%と低迷。

【参考】
Eurekahedge Hedge Fund Index(ヘッジファンドのパフォーマンス)
https://www.eurekahedge.com/Indices

 SG TREND INDICATORから過去1か月間の市場評価は+2.64%と回復傾向、自動売買のSG CTA Indexは+1.14%と堅調です。株価は+2.27%回復、FX+0.34%、債券+0.91%、商品-0.93% 商品を除いてリスクオン、全体に上昇展開です。

【参考】
SG TREND INDICATOR(プライムサービスのインディケーター)
https://cib.societegenerale.com/fileadmin/indices_feeds/ti_screen/index.html

メインシナリオ

 短中長期は楽観強気シナリオを想定。1か月から半年ほどは調整しながら相場が落ち着くのを待ちます。中長期的には第1四半期の1~3月の景気状況を確認したいです。

 パニックによる騰落率が大きいほど短期筋の仕掛けによるものなので、そのとき売買の中心となる銘柄は注目・成長度合いの高いものとも判断できます。スクリーニングしながら、今後の投資の参考にします。

 株式市場はラッセル2000(小型株)とS&P500(大口株)の2つのバランスも重要になり、先行した動きを見せるラッセル2000を当面は監視を強めます。債券市場、FX市場は堅調推移、商品市場の原油採算ライン50を割り込み展開を注視です。反発なのか下落加速なのかを見極めです。また、仮想通貨市場はビットコインの5月半減期まで強気シナリオです。 

 市場は新型コロナウィルス騒動による短期調整、米中貿易交渉は第2段階の不確実性、イギリスEU離脱影響もありますが、強気姿勢は基本的に変わりません。米国市場の回復サイクルが世界に波及し、循環株、バリュー株、新興国市場、日本株の順に、影響が見られるでしょう。国際政治の安定が進み、マクロ経済動向から読み取りたいです。

 その他、REITの不動産価格動向、TLT、ゴールド、ビットコインのバランスを確認しながら、相場環境を判断します。ジャンク債(HYG)はやや上昇基調のため、楽観ムードです。市場の先行シグナルはいくつか見受けられますが、他方警戒シグナルもあり、懸念材料を織り込みながら、株価が市場全体を牽引していくでしょう。

カウンターシナリオ

 市場心理による弱気シナリオ。

 中国貿易統計は1月の貿易統計を発表見送り、次回に2か月分を公表します。春節休暇ということもあり、2か月分の統計発表は過去にも習慣として見受けられました。しかし、新型コロナウィルスによる、景気不穏から、連鎖倒産など深刻化した場合、市場心理による売り加速です。

 株価が歴史的高値で推移し、利食いをしたい水準でもあり、市場心理による深い調整を招きやすく、ドローダウンには警戒も必要です。投資の選択肢が特段少なく、株を買わざる得ない現状の投資環境では、市場の大幅調整によって、次の投資先を選定したい状態でもあります。

 新規の売り材料が突発的に出た場合は、長期的な上昇相場の区切りとして、また長期上昇相場へのクールダウンとして、売りたい側面もあります。

 相場全体が下落転換する基準はダウの26000~26500ドル近辺をイメージしています。

セカンド・カウンターシナリオ

 経済鈍化シナリオから、好感シナリオに転換。 

 前回同様、OECD経済協力開発機構の見通しによると、世界のGDP成長率は、今年は金融危機以来の最低水準となる2.9%と予測されており、2020年や2021年も2.9~3.0%程度にとどまると見られています。

 OECD景気先行指数データは回復反転の兆しも高まり、相場の上昇を加速させるシナリオです。市場の不穏要因を打ち消し、不透明感が薄まり、市場心理は悲観から楽観へと変化してゆき、OECDの鈍化予想が変化することも考えられます。

サブ・カウンターシナリオ

 調整長期化シナリオ。

 市場の飽和状態は、新規ネガティブ材料を求めている面もあり、売り仕掛けをしたいのです。一方、長期の買い仕掛けもぶつかり、長期の調整シナリオの可能性もあり、中でもドル円がその典型的な動きをしています。

 市場を険悪にさせる材料として、中東の地政学リスクや香港デモの長期化(最悪のケースは中国軍事介入)、米中貿易交渉の第2弾合意の不確実性が織り込まれています。

 マーケットとの長い対話が続き、様子見ムードが深くなりすぎ、調整が長期化するシナリオも考えられます。ボラティリィティ低下を招く懸念を含むので、VIX先物動向をもとに判断します。

サブ・カウンターシナリオ2

 ポジティブ・サプライズによるシナリオ。

 例えば米中の関税に関する第2段階合意、イギリスのEU再加入などが起こると、マーケットはポジティブに反応します。市場関係者の間では、米中合意は大統領選11月以降に進展するとの予想もあり、米中関係の前進は先のことでしょう。また、イギリスはEU離脱を決定しましたが、1年の移行期間中に、経済状況の変化からEUに再加入する、などの報道があったらサプライズです。

 ポジティブ・サプライズのシナリオは不確定なニュースを意図的に流し、市場の反応を試すことがあります。おそらくアルゴリズムで値幅を確認しにくるでしょう。その際は騰落の値幅は激しくなることが想定されるため、ポジションサイズやカウンターラインに細心の注意を払いましょう。

Author

天空の狐

天空の狐

ALTS investor Media 編集部 IFTA国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト、ESTA名誉会員(日本人で唯一)、ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンドプログラム修了。PythonMT4・MT5自動売買&裁量Aiトレーダー。ドイツ企業INTALUS.日本代表を経て、ドイツ金融アルゴリズムTradesignal日本代表に。テクニカル分析やアルゴリズム・ストラテジー開発。ヘンリー・ビジネス・スクールヘッジファンド・プログラムのアドバイザーを従事。ブログ「天空の狐 ビットコイン&グローバルマーケット」、マネーポストWEB執筆中。Twitter:@firmamentfox

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