上り鮎はどれになるか? 3月中旬から1か月のシナリオ分析

【目次】

  • グローバルマーケットの考察
    1. マーケットメモ
    2. NEWS PICK OUT
    3. 狐のミニミニコラム
  • グローバルマーケットのシナリオ分析
    1. 直近1か月の投資スタンス
    2. ヘッジファンドの投資指針
    3. メインシナリオ
    4. カウンターシナリオ
    5. セカンド・カウンターシナリオ
    6. サブ・カウンターシナリオ
    7. サブ・カウンターシナリオ2
    8. サブ・カウンターシナリオ3

グローバルマーケットの考察

【主要銘柄の先月比変動幅】

  • ■ダウ:-21.20%
  • ■日経:-26.85%
  • ■ドル円:-1.64%
  • ■ビットコイン円:-44.38%
  • ■ゴールド:-3.07%
  • ■原油:-35.43%
  • ■TLT(債券):+6.96%

 先月比は全面リスクオフ。TLT(債券)上昇は市場不安の象徴で、新型コロナウィルス感染拡大による経済への影響が、マーケットを悲観的にさせています。追い打ちとばかりに、サウジアラビの原油増産計画の発表もあり、政治の信用不安が加速し崩落。

 コロナショックでFear&Greed Indexは、先月Greed(欲望)50~60台のリスクオンだったのが急反転。現在はFear(恐怖)2~7台のリスクオフとなり、歴史的全面安です。恐怖に覆われたマーケット地合いです。

【参考】
Fear&Greed Index(リスクオン、リスクオフの判断)
https://money.cnn.com/data/fear-and-greed/

マーケットメモ

【マーケットメモ(短中期)】

  • ■クラッシュ構図、安全資産の上昇見直し
  • ■世界的な金融緩和、利下げ、景気対策期待
  • ■中東地政学リスク、香港情勢、リスクオフ下落
  • ■ビットコイン半減期、5月頃まで買いの思惑と安全資産の再評価
  • ■米中貿易交渉の進展、第2段階交渉の不透明感
  • ■2019年9月、2020年3月のマーケット変化

【マーケットメモ(長期)】

  • ■新型コロナウィルスによる経済活動の空白
  • ■市場心理の回復
  • ■世界経済成長の景気減速もしくは景気回復、双方の綱引き
  • ■TLT動向、ヘッジファンドの利益幅
  • ■中央銀行デジタル通貨の調査、検証

 短期的なコロナクラッシュです。長期上昇相場で保有されたポジションが利益確定されたことで、下落は加速しました。経済活動が空白になり、2か月後から6か月間の経済指標に要警戒です。一方、各国の景気刺激策にも注目。米国では大規模な景気刺激策、減税の動きなど、市場の構図は「コロナショック VS 景気刺激策」の様相を呈しており、下落と上昇思惑の拮抗を考えます。

 マーケットクラッシュ時は、長期投資先を探す時でもあり、公共株など安定株を物色できます。公共、電気、バス、電車、ガスなどは生活に欠かせない銘柄です。コロナウィルスが終息するまでゆっくり吟味します。

 本来のマクロ経済評価からは、バリュー株や循環株、新興国市場への投資に注目していました。しかし、今の市場は悲観心理が渦巻く地合いで、楽観心理に変化するまでは半年ほどの期間を要するでしょう。セルサイド系のマーケットレポートで書かれた甘言は捨てましょう。安易に買えない相場です。

【参考】
Composite leading indicator(OECD景気先行指数)
https://data.oecd.org/leadind/composite-leading-indicator-cli.htm
【参考】
S&Pグローバル総合指数(米ドル建て)
https://japanese.spindices.com/indices/equity/sp-global-bmi-usd
【参考】
VIX(恐怖指数)
http://www.cboe.com/vix/
【参考】
CFTC (米商品先物取引委員会)VIX FUTURES (恐怖指数 先物)
https://www.quandl.com/data/CFTC/1170E1_F_L_ALL-Commitment-of-Traders-VIX-FUTURES-E-Futures-Only-Legacy-Format-1170E1

 OECD景気先行指数データは半年先の相場転換を先行する指標といわれています。99付近から100に向かい、底入れで景気回復シナリオが優勢です。また、中国、イギリス、ドイツも同様に100に向かう展開は、景気底入れ観測となり、回復シナリオが優勢です。大局観のマクロ経済は上昇反転への基調です。

 S&Pグローバル総合指数(米ドル建て)は、月初来リターン-18.84%とリスクオフによる下落展開を見せました。S&P新興国総合指数(中国A株含む、米ドル建て)は-8.62%、S&P欧州大中型指数(米ドル建て)が-20.83%と、米国、新興国や欧州のパフォーマンス大幅低下です。指数を見比べると、目先は上昇への一光が消えています。

 VIX(恐怖指数)は77.57付近まで急騰、57.83%付近で推移。先月比+44.18%で、移動平均13.22から大幅乖離となり、マーケットショックの象徴です。

 2月VIX先物はロングポジション、ショートポジションが増加、VIXが77台まで上昇したことは短中期のボラティリティ増加を指します。調整地合では価格が激しく上下するため、恐怖が付きまとう相場展開です。

 マーケットメモの総括としては、長期マクロ経済は回復シグナルの上昇目線です。しかしコロナショックにより、半年間ほどは短中期の市場は懐疑的となり上下のスパイクを形成しながら、BOX展開が予想されます。

NEWS PICK OUT

 3月6日の石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国との会合が開かれましたが、協調減産の交渉は決裂。コロナショックも重なり、サウジアラビアの原油増産計画を引き金に、原油価格は下落加速です。

 採算ライン50を割り込む展開は、正常な市場価格均衡が崩れ、原油安の恩恵と背離し、産油国の損害は中東不安を想起させることで、市場不安を増長させます。債券市場が荒れ、安全資産に資金が流れ、消費国の自国通貨が下がれば、産油国への損害は減少するものの、原油価格は30ドル台への突入が現実味を帯びだし、今度は消費国が犠牲になります。

 産油国である中東の政治判断が、世界の中心となっているのが現状です。国際政治のパワーバランスの移ろいにより、世界的なリーダーは不在となり、意思決定の淀みが生まれます。「産油国、原油」 VS 「消費国 シェールガス」の覇権争いの様相です。

 アメリカの株式市場は大相場となっています。10%強下落したと思えば、翌日には10%もの上昇をすることが1週間で何度もありました。NY市場ではサーキットブレーカーが発動するなど、市場の混迷が深い展開です。

 暴落時に、TLTは急騰しながらも、落ち着いた債券市場は王様の風格です。他市場は利確に追われて、安全資産の上昇もなく、追証を避けるために保有資産を現金化、完全に投げ売りした格好です。市場心理が市場価格を動かし、理屈のない動物的な値動きが当面続きます。

 3月8日からアメリカは夏時間入りしたので、経済指標の発表時間が変わります。

狐のミニミニコラム

 クラッシュ相場の中、回帰分析では回帰直線に戻る値動きもあり、まだまだ冷静な心を持つトレーダーも残っている印象です。狐の感覚が慣れてしまったのか、その面もあると思いながら、マーケットクラッシュはこんなレベルではなく、序章と見ています。

 みんなが「パニック!パニック!」と言いますが、“まだパニックでない”と捉えています。みんなが大丈夫と言うときは大丈夫ではありません。投資は「どれだけ大衆の思考と真逆の思考を受け入れられるか」が鍵となります。

 シナリオをいくつも考えながら、「次はこれ」「そう動くならこれ」といった感じで、起きた事象に対して、冷静に行動するしかありません。マーケットが楽観のときだろうが、悲観のときだろうが、こうした作業を淡々とこなす――、これが投資で生き残るために大切です。普段、何気なく歩きながら、足元のアスファルトの粒を一つひとつ見てゆく姿勢が、本当の危機が訪れたときに、身を守れる能力として現れます。改めて気づきのあるコロナショックでした。

グローバルマーケットのシナリオ分析

直近1か月の投資スタンス

【休むも相場】

 歴史的マーケットショックによる市場心理から、投げ売り・打算買いの値動きには慎重になりましょう。悲観の下落波を食い止めに、政府は動き出し、金利を切り下げ、減税など景気刺激策を与えながらも、4~5月の経済指標では実体経済が浮き彫りとなり、下落再開となる可能性があります。もう一段下がり、反発期待買いが焼かれる相場を想定しています。そのため、様子見しながら、市場へのスタンスを長考してゆきます。

 長期調整の新展開で、様子見、分析、物色が基本スタンスです。短期反発、中期は下落、上昇の価格スパイクを繰り返し、中長期BOXを作り出す。まるで、可愛らしいハリネズミみたに、針が見え隠れする相場になります。常々申していますが、“パニック的な売りでの調整幅とポジションサイズを注意”しましょう。

 上り鮎の目星をつけて、意志を固めてゆく、どの銘柄が上昇するのか、下落するのかというリストを作り、その判断能力を磨き上げる。こうした鍛錬の繰り返しです。

ヘッジファンドの投資指針

【ヘッジファンドの投資指針】

  • ■自動売買が中心
  • ■クラッシュで追証に追われて、利食いを繰り返され、市場は大掃除中
  • ■先進国と新興国のマクロ景気サイクルは休止となり調整
  • ■全体に見直し、ロング&ショート、マクロ戦略、モルティー戦略
  • ■イベントドリブン戦略はお休み
  • ■リスクヘッジの戦略を再考です

 ファンド、ヘッジファンド、インディケーターの順でパフォーマンスを見ていくと、今後の投資戦略が見えてきます。市場が一遍したことで見通しはリセットです。

 近年続いていた上昇相場から崩落・大幅調整の相場へ転換しましたが、これは債券市場へ資金が回帰する可能性もあり、市場全体の成長性が遅滞します。安全資産への見直しも始まり、どの市場に現金として逃げ出すかなど、ヘッジ銘柄の機能を分析中です。

 The Berkshire Hathaway Portfolioの1か月のリターンは-3.98% 、S&P500(^GSPC)が+1.98%。これら指標は遅行性もあり、大幅な変化は来月以降となるでしょう。警戒が必要です。短期的な調整下落を意識しています。

【参考】
The Berkshire Hathaway Portfolio(バフェットのファンド)
https://finance.yahoo.com/u/yahoo-finance/watchlists/the-berkshire-hathaway-portfolio

 Eurekahedge Hedge Fund Indexは2月の評価が-1.16%のリターンです。保有銘柄の低迷が加速しているため、選考される銘柄も変化するでしょう。自動売買Eurekahedge AI Hedge Fund Indexでは、2月が0.59%とやや下振れです。仮想通貨はEurekahedge Crypto-Currency Hedge Fund Indexでの2月の評価が-1.31%と先月からやや回復です。

 投資対象のパフォーマンスを確認するとき、2020年2月を起点に判断をします。直近パフォーマンスがどこまで軽微で済むかのが、ヘッジファンドの本質評価に繋がります。大切なのは、みんなが損を出るとき、どこまで小さい損益なのか、高評価のポイントになります。堅牢で絶対リターンが大切です。

【参考】
Eurekahedge Hedge Fund Index(ヘッジファンドのパフォーマンス)
https://www.eurekahedge.com/Indices

 SG TREND INDICATORから過去1か月間の市場評価は+10.29%と回復傾向、自動売買のSG CTA Indexは+0.52%とやや低下、株価は+0.57%回復、FX+0.37、債券-0.37%、商品-1.18% ボラティリティが急上昇となり、全体のドローダウンが-48.95%など、分析時点から全面安への備え、商品市場の強まりを示唆しています。

【参考】
SG TREND INDICATOR(プライムサービスのインディケーター)
https://cib.societegenerale.com/fileadmin/indices_feeds/ti_screen/index.html

メインシナリオ

【短中長期はメインシナリオの再考と長考】

 カウンターライン到達の銘柄が数多くあり、中長期的には第1四半期の1~3月の景気指標を確認したいです。楽観の想定が崩れ、景気懸念の高まりがあるので、勇気を出して買ってゆくよりは、戻り下目線で短期回転売買を繰り返すイメージです。直近のBOX上限高値を上抜いたら、中長期買い目打診を検討です。

 悲観の下落波は3回ほど繰り返します。起点と時間軸により詳細な分析は異なりますが、悲観の第1波は形成しており、市場心理に左右される値動きが当面は続きます。

 パニック相場での騰落率は短期筋の仕掛け度合がわかり、その銘柄の注目・成長度合いの高いものとも判断できます。スクリーニングしながら、今後の投資の参考にします。

 債券市場は王様のように威風堂々としており、市場は調整状態と判断できます。パニック相場でしたが、反発期待も残されています。株式市場は「ダウの下落から反発」兆候を確認する作業が続きます。商品市場は下方向の動きが強く、安全資産の役割を見直します。

 仮想通貨市場はビットコイン、アルトコインも下落展開となり、貴重な歴史的値動きと考えています。クラッシュしたらゴールド同様に安全資産として買われないと判明したのです。今後は5月半減期まで弱気シナリオ転換を探るイメージです。

 Fear&Greed Index、VIX、主要株式インデックスから、半年ほどは中長期調整が必至です。長期の強気姿勢が崩れ、奈落へと落ちる恐怖との戦いです。市場回復サイクルに疑念が生じ、公共株、安定株、内需株、債券市場の回帰となります。躍動を生む循環株、バリュー株、新興国市場、日本株の成長を止めます。

 その他、オリンピックも直前REITの不動産価格動向に注目です。再生系ヘッジファンドの誕生も強まり、クラッシュにより安全資産の見直しも高まります。TLT、ゴールド、ジャンク債(HYG)、ビットコイン、円の動向に注視です。

カウンターシナリオ

【市場心理による弱気シナリオ再開】

 市場心理の弱気シナリオが発動し、経済指標など関係ないシナリオです。追証に追われて保有資産の現金化を迫られた理由なき投げ相場です。こうした相場への備えは「この水準になったら切り替える・撤退する」というカウンターラインの考えが重要です。

 イベントの自粛要請、各国の渡航制限など、経済活動が止まる未知な結果は、どんな経済指標を生み出すのか、我々は歴史の生き証人です。景気懸念から、風評や連鎖倒産などまで深刻化した場合、市場心理による売りは再加速するでしょう。悲観の波をもう一段下げに警戒です。

 株価の歴史的高値で推移から大幅調整によって、市場の未透視な霧に囲まれて、晴れるのを待ちながら、ダウの26000~26500ドルを割り込みは新たな下落展開へ可能性もあり、市場心理、値動き中心で判断する弱気シナリオです。

セカンド・カウンターシナリオ

【好感上昇シナリオに転換】

 下落シナリオがあれば、好感上昇シナリオも用意です。ダウ26000~27500を超えた、一旦、利食いで下落し、そこから反発したら、好感上昇シナリオです。短期の上昇で、反転したと判断してはいけません。

 飛びつき買いには注意が必要です。上昇と調整が1つのセットが、マーケットの値動きであります。

サブ・カウンターシナリオ

【調整長期化シナリオ】

 市場の飽和状態は、新規ネガティブ材料を求めている面もあり、売り仕掛けをしたいのです。一方、長期の買い仕掛けもぶつかり、長期の調整シナリオの可能性もあり、中でもドル円がその典型的な動きをしています。

 市場を険悪にさせる材料として、中東の地政学リスクや香港デモの長期化(最悪のケースは中国軍事介入)、米中貿易交渉の第2弾合意の不確実性が織り込まれています。

 マーケットとの長い対話が続き、様子見ムードが深くなりすぎ、調整が長期化するシナリオも考えられます。ボラティリィティ低下を招く懸念を含むので、VIX先物動向をもとに判断します。

サブ・カウンターシナリオ2

【ネガティブ・サプライズによるシナリオ】

 政府要人のコロナウィルス感染など、政府機能の一時停止です。一過性の売りに警戒です。SNSニュースなどに、アルゴリズムが反応しやすい展開です。こうした下落には、逆張りの買い短期回転を試みます。

サブ・カウンターシナリオ3

【ポジティブ・サプライズによるシナリオ】

 各国政府と中央銀行による共同利下げ、景気刺激策の共同協議など、新経済刺激策など、などの報道があったらサプライズです。瞬間的高騰から、翌日以降の相場が停滞に警戒です。1日には適正なボラテリィがあり、暴飲暴食すると次の日は食べられなく、動かなくなるみたいに、市場は人間の食生活のような値動きもします。

Author

天空の狐

天空の狐

ALTS investor Media 編集部 IFTA国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト、ESTA名誉会員(日本人で唯一)、ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンドプログラム修了。PythonMT4・MT5自動売買&裁量Aiトレーダー。ドイツ企業INTALUS.日本代表を経て、ドイツ金融アルゴリズムTradesignal日本代表に。テクニカル分析やアルゴリズム・ストラテジー開発。ヘンリー・ビジネス・スクールヘッジファンド・プログラムのアドバイザーを従事。ブログ「天空の狐 ビットコイン&グローバルマーケット」、マネーポストWEB執筆中。Twitter:@firmamentfox

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