夏の潮 2020年7月中旬から1か月のシナリオ分析

【目次】

  • グローバルマーケットの考察
    1. マーケットメモ
    2. NEWS PICK OUT
    3. 狐のミニミニコラム
  • グローバルマーケットのシナリオ分析
    1. 直近1か月の投資スタンス
    2. ヘッジファンドの投資指針
    3. メインシナリオ
    4. カウンターシナリオ
    5. サブシナリオ

グローバルマーケットの考察

【主要銘柄の先月比変動幅】

  • ■ダウ:-3.39%
  • ■日経:-3.61%
  • ■ドル円:-0.19%
  • ■ビットコイン円:-0.54%
  • ■ゴールド:+3.51%
  • ■原油:+3.23%
  • ■TLT(債券):+3.41%

※2020年7月13日時点

 ダウや日経平均、ビットコイン円は先月比でマイナスに転落。商品市場と債券市場はプラスを維持しています。現在はリスクオンとリスオフを繰り返す地合いで、株価などは高値圏での推移です。

 Fear&Greed IndexはGreed(貪欲)の60台に推移。VIX(恐怖指数)は30%台で推移。2つの指数から、リスクオン5、リスクオフ5の割合でマーケットの投資割合を観測するといいでしょう。市場心理はやや恐怖を残しながら夏相場入りです。

 各国政府の景気刺激策による金融上昇相場が定着し、ここから半年かけて業績相場に変化してゆくでしょう。夏相場は様子見しながら、秋相場と来年のマーケットを考えるといいと思います。

【参考】
Fear&Greed Index(リスクオン、リスクオフの判断)
https://money.cnn.com/data/fear-and-greed/

マーケットメモ

【マーケットメモ(短中期)】

  • ■夏枯れ →
  • ■ドル安傾向 ↓
  • ■全米の人権活動、暴動による復興需要↓↑
  • ■コロナの第2波 ↓
  • ■香港の中国化 ↑
  • ■2019年9月、2020年3月のマーケット変化 ☆

【マーケットメモ(長期)】

  • ■FEDバランスシート 縮小 ☆
  • ■世界的な景気対策期待 金融相場から業績相場 ↑↓
  • ■香港の中国 各国の制裁決議 ↓
  • ■ドル不足 新興国リスク ↓
  • ■米国選挙 SNSのフラッシュニュース ↓
  • ■来年ポートフォリオの検討 ☆

 目先は夏枯れ相場に向けて展開することが予想され、株高ドル安のリスクオンで推移するでしょう。全米の人権活動による暴動と復興需要は株高要因ながら、コロナ第2波の警戒が高まります。アジア株は香港暴動の鎮静は上昇要因となり、ひとまず全体的に上目線ですが、夏枯れや利益確定の展開も予想されます。最悪のケースとして、二番底や緩和を求める下落催促相場に急転することにも警戒です。

 米株市場は、FRBのバランスシートの縮小もあり、株価推移がおおよその予想でしょう。ここから半年かけて業績相場に移行してゆきます。企業業績の回復が持続的のものなのか、秋ごろに判断が始まると思います。景気回復が弱いと判断されたら、2番底や催促相場で下落を見る可能性があります。

 香港の国家安全法に対し、各国の中国への制裁決議がどうなるか、これら政治要因が市場にマイナスに働くシナリオも頭に入れておきましょう。アメリカで制裁決議がされ、中国や新興国でのドル枯渇による景気減速は懸念材料です。こうした米中による通貨の覇権争いにも警戒です。

 11月の米大統領選挙に向けた活動も始まれば、SNSによるフラッシュ相場にも念のため注意しましょう。

 まとめると、直近は夏枯れ相場で様子見、秋にかけて業績相場へ移行、実態経済に関する指標や報道の注目度合が高まります。

 コロナ後の世界に対し、ハイテク株への熱気は高まりつつあり、テスラでは過熱感もチラホラ。コロナ・ショックからの反発には、過剰な判断も織り込まれている可能性があり、それが今後是正されたときの反動で、怪我しないように気をつけましょう。

■トレード・アドバイス

 マーケットメモを見ながら、このニュースが来れば、上昇するだろう、下落するだろうという目星をつけ、そのときどのような投資を行うか、リストアップすることをおススメします。

【参考】
Composite leading indicator(OECD景気先行指数)
https://data.oecd.org/leadind/composite-leading-indicator-cli.htm
【参考】
MSCI ACWI Index(世界株価指数)
https://www.msci.com/acwi
【参考】
S&Pグローバル総合指数(米ドル建て)
https://japanese.spindices.com/indices/equity/sp-global-bmi-usd

 Composite leading indicator(OECD景気先行指数)は97.1で急速に加速しており、半年以降の見通しは明るいです。MSCI ACWI Index(世界株価指数)も500台に乗せる堅調です。S&Pグローバル総合指数(米ドル建て)は、月初来リターンは+2.88%とこちらも底堅い推移です。

 マーケットメモの総括としては、報道要因は短期的な下落調整を呼び込みますが、長期的には株式市場は回復を見通しています。経済の主要指数からもマクロ全体に上昇基調です。上目線が基本姿勢です、下落は押し目として打診することも検討できます。

■トレード・アドバイス
 全体を俯瞰する視野と共に、細かいデータも見る習慣作りが大切です。これは天空の狐スタイルなので、自分に合うスタイルを模索してみてください。頭の整理と共に、上昇・下落・様子見といった投資行動の目線を定めることが肝になります。

NEWS PICK OUT

■(6月24日)米国ジャンク債発行、過去最高を記録
 企業の資金調達として、ハイイールド債市場が過熱しています。市場の流動性を確保するため、FRBによるジャンク債の資産購入計画も後押しとなり需要を高めています。

 本来、倒産すべき会社も生き残り、不健全な企業が増加する懸念もあります。企業は現金と利益の確保が重要です。景気循環後に業績判断が下降に転じた場合には債務超過の懸念も生まれ、FOMCは諸刃の判断をした格好です。ジャンク債の報道には耳を傾けておきましょう。市場天井のシグナルとなる可能性もあります。

■(7月7日)ドイツ銀行とグーグルのパートナーシップ契約合意
 ドイツ企業全体でネットワークなどが老朽化しており、諸問題を解決に本腰を上げた印象です。5Gなどネットワークスピードは持続的な景気回復を高める上昇要因です。また、グーグルの金融業への足掛かりとなり、新しい銀行モデル誕生に期待を寄せています。

■(7月8日)香港のドルペック制を検討
 中国の制裁決議に検討され、中国国内のドル枯渇となれば、米国の金融システムのアクセスが遮断され、ドル建て融資などが止まり、中国市場が世界と分断されます。

 中国の外貨準備からドル調達すれば、人民元高となり国内景気が冷え込みため、中国の外貨準備の動向にも注目です。ドル枯渇はドル不信を呼び込み、痛み分けの可能性もあり、人民元の国際化を試みながら、ドルの役割を世界が問うています。

 当面、各国の景気刺激策により、ドル高需要から、国家間のドルの奪い合いは市場の乱高下要因にもなりえます。

■(7月10日)GPIFの外債投資の拡大可能性
 長期株高要因となり、国内の超低金利債券の目標値を下げ外債構成の比率高めたことで、債券動向、外債運用に新しい波をもたらすことになります。投資メモとして、金利低下で、債券価格が上昇、ドル安構図となります。債券の動きがマーケット全体の値動き予想に役立ちます。

■トレード・アドバイス
 報道を見たら、投資行動のシナリオを描きましょう。分析⇒投資の手順を踏むことが重要です。目先の相場に惑わされず、心身を整えて、データと共に相場へ向き合います。日々の報道から、上昇要因、下落要因、様子見と3つの投資指針をしっかり持つことで、瞬発的に動くとき・休むときのメリハリが生まれます。

狐のミニミニコラム

 政府による市場介入によって、世界は計画経済へとゆっくり舵を切り出し、新しい時代に向かっている印象があります。香港の新法を発端に自由とは何かを問いながら、世界と中国、自由経済と計画経済の両端を見ながら、個人の自由、個人への統制の在り方が問われています。

 政府がいる市場は、暗黙に買わざる得ない状況と考えますが、株価の流動性はいずれ枯渇するでしょう。その時に仮想通貨市場、中央銀行のデジタル通貨(CBDC)などは流動性を求めて、新たな市場に向かいだすと思っています。

 コロナは経済や個人の生活など様々な場面で転換期を与えました。

グローバルマーケットのシナリオ分析

直近1か月の投資スタンス

【目線推考、夏休み】

 直近の投資スタンスは今後の目線を推考しながら、来年のポートフォリオを考えます。夏枯れ相場なので、無理せずに休みながら、次のシナリオを熟考します。

 マーケットにも満ち潮があり、ボラティリティから投資行動を判断します。日々の変動幅に注目しながら、休むとき、投資するときの判断力を養うといいでしょう。

ヘッジファンドの投資指針

【ヘッジファンドの投資指針】

  • ■ファンダメンタルが有効 持続的な上目線へ
  • ■直近は全体に夏枯れ気配

 ヘッジファンド、インディケーターの順でパフォーマンスを見ていくと、今後の投資戦略が見えてきます。ヘッジファンドの投資結果から、マクロ系、AI、アービトラージが復調しています。ロング&ショート戦略の利益はやや弱まりましたが、投資の資金流出が止まりだしています。

 Eurekahedge Hedge Fund Index 6月評価が+1.45%自動売買Eurekahedge AI Hedge Fund Index+1.84% 仮想通貨はEurekahedge Crypto-Currency Hedge Fund Index-1.53%と全体的に復調しましたが、仮想通貨はマイナスに転落。

【参考】
Eurekahedge Hedge Fund Index(ヘッジファンドのパフォーマンス)
https://www.eurekahedge.com/Indices

 SG TREND INDICATORから過去1か月間の市場評価は+0.03%と鈍化傾向、自動売買のSG CTA Indexは+0.17%、株価は+0.11%、FXは+0.25%、債券が+0.23%、商品は−0.51%で、全体のポートフォリオは+0.09%です。市場は回復しているにも関わらず、軟調な展開です。

【参考】
SG TREND INDICATOR(プライムサービスのインディケーター)
https://cib.societegenerale.com/fileadmin/indices_feeds/ti_screen/index.html

■トレード・アドバイス

 ヘッジファンドのデータベースから、彼らの姿勢や目線、有効戦略が見えたら、同じようにするのか、それとも裏をかくかなど、現在のマーケットに有用な投資戦略が見えてきます。そして、どの市場のボラティリティが強くなるか、弱くなるかを見極めることにも繋がります。

 プロが攻める市場、逃げる市場が分かれば、どこを主戦上とし、どんな戦略で挑むかを探る手助けになり、自ずと戦いやすい市場を見つけることに繋がります。

メインシナリオ

【様子見 夏休み】
 8月は夏休みで様子見です。基本的に秋相場、来年の相場に向けて長考です。直近の利確下落には注意が必要です。

 夏明けのメインシナリオは上目線が中心です。変化日は8月20日前後をイメージしています。価格はBOX、W字回復のように上下する見通しです。ダウが23500~25000±100、ナスダック総合指数は9000~9700±50、ラッセル2000は12000~12300±100を上回る限り上目線です。これらのカウンターラインを下回ると、目線を再考します。

カウンターシナリオ

【新型コロナウイルスの第2波 悲観シナリオ】

(1)経済活動の再開後、再び新型コロナウイルスの再流行
(2)新型コロナウイルスが新興国(アフリカなど)で蔓延し、再度、先進国での感染拡大のシナリオ
(3)ウイルスが突然変異して、新たな感染が発生。マーケットは悲観売り加速

(1)(2)(3)が現れると、もう一段の崩落を覚悟します。コロナの報道数が減らない限り、リスク要因です。アルゴリズムの値動きには注意が必要です。

サブシナリオ

【調整長期化シナリオ】

 経済回復まで長期の時間を要するなら、BOX相場も長引くでしょう。株価停滞シナリオです。

 コロナ・ショックの変動幅からトレーダーが収益をある程度確保した場合、そこから過度にリスクをとった運用は控えるようになり、上昇も足踏みする可能性があります。企業業績も株価変動要因になろうとする中、判断に迷う結果ばかりになることも、上昇の勢いを削ぐことに繋がるでしょう。

 各国中央銀行の株価買い支えと緩和を求める催促相場での売り仕掛け、などの思惑が交錯し、BOXで推移するシナリオです。

Author

天空の狐

天空の狐

ALTS investor Media 編集部 IFTA国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト、ESTA名誉会員(日本人で唯一)、ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンドプログラム修了。PythonMT4・MT5自動売買&裁量Aiトレーダー。ドイツ企業INTALUS.日本代表を経て、ドイツ金融アルゴリズムTradesignal日本代表に。テクニカル分析やアルゴリズム・ストラテジー開発。ヘンリー・ビジネス・スクールヘッジファンド・プログラムのアドバイザーを従事。ブログ「天空の狐 ビットコイン&グローバルマーケット」、マネーポストWEB執筆中。Twitter:@firmamentfox

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