2020年10月中旬からの短中期マーケットの定量分析

【目次】

  • オリジナル定量分析
    1. 変化日
    2. マーケット構図
    3. 主要市場 回帰分析
    4. 市場分析の判断指針
    5. 注目 経済指標
  • 仮想通貨銘柄の回帰分析とテクニカル分析
    1. NEWS PICK OUT
    2. ビットコイン円
    3. イーサリアム円
    4. リップル円

オリジナル定量分析

変化日

 変化日からマーケットの値動きを想定します。

  • ■為替相場:11月3日、9日
  • ■商品市場:10月22日、11月2日
  • ■仮想通貨市場:10月26日、12月7日
  • ■株式市場:10月9日、11月16日
  • ■債券市場:11月2日

寸評:前回記述10月5日前後の変化日を起点に、市場は変化した印象です。また11月2日前後にも変化日があり、米大統領選を織り込みだしています。市場のリズム変化に注目し、「目線を全体的に再考」もしくは「チャート分析をリセットする」といいでしょう

※10月20日時点、変化日とはオリジナルの定量分析で「マーケットシナリオを再考して、戦略を考え直す日」

マーケット構図

 マーケット構図は株高、ドル安が基本構図。商品市場のボラティリティ低下、為替市場はドル安傾向、仮想通貨市場はビットコイン高、アルトコイン高で高値圏を探る状態。マーケット構図の大変化が近く、柔軟に市場状況を確認しましょう。

  • ■リスクオフ要素:ゴールド ビットコイン、ジャンク債(HYG)、CDS、TEDの監視、特にTLTの流動性、DXY(ドルインデックス)のドル安展開に注意
  • ■リスクオン要素:各国の緩和、景気刺激策、債券市場の変化
【参考】
finviz (株式市場の銘柄構成をヴィジュアルで確認しやすいサイト)
https://finviz.com/map.ashx?t=geo&st=w4

■トレード・アドバイス
 マーケット構図を把握することで、「投資シナリオを維持するか、再考するか」の判断ができます。例えば、基本構図が株高・ドル安で、次の日が株高・ドル高になれば、投資は様子見し、市場変化を見極める、という行動に移れます。

主要市場 回帰分析

スタンス トレード目線 カウンターライン
(orコアBOX)
価格推移予想BOX
TLT 中立・調整 BOX基調 149.00±50 153.00~180.00
ダウ 強気 上昇基調 24000±100 21500~29600
日経平均 強気 上昇基調 20000±50円 19000~24000円
DAX 強気 上昇基調 10800±50 10000~15000
EUR/USD 強気・調整 上昇基調 1.2900±50 1.1300±50~
1.2200±50
USD/JPY 弱気・売り目 下落基調 106.70±50円 103.00±50~
107.00±50円
BTC/JPY 強気・調整 上昇基調 90万円台±10万円 90~144万円台
GOLD 中立・調整 BOX基調 コアBOX
1800±50~2064±50
1650~2200
原油 中立目線 BOX基調 コアBOX
32±1~45±1
33.00~55.00

※カウンターライン=投資目線を切り替える水準、損切ラインの参考値

※コアBOX=節目としての価格帯
※2020年10月20日時点

 全体的に投資スタンスは目線策定の時期に。基本姿勢は上目線ですが、下目線を加えることも検討です。投資配分先が大幅変化する可能性もあります。来季に向け分析を一旦リセットし、新たな気持ちで、投資の矛先を見定めようと思います。全てを切り替えてゆく時期に入ります。

市場分析の判断指針

 ファンダメンタルとアルゴリズム(自動売買)の分析を比較して、現状6対4でややファンダメンタルを優先して判断します。市場心理は米大統領選の結果で上下に振れやすくなるので、警戒しましょう。市場が落ち着くまで、株式市場や経済指標から長期の目線を判断します。

注目の経済指標

 当面、中国や米国の景気回復度合いを見比べます。中国の実質GDP 7月~9月は結果+4.9%で予想の+5.2%より弱く、また10月消費者物価指数(CPI)は1.7%低下傾向。米国の実質GDP7月~9月は-3.45%減、9月消費者物価指数(CPI)は1.4%増加傾向。

 中国に景気回復は見られるものの、消費は低下傾向。一方、米国は他国より成長格差が生まれ、半年後には政治要因になると予想しています。

【参考】
AssetMacro(マクロ経済データを閲覧できるサイト)
https://www.assetmacro.com/
【参考】
FRED(経済データ関連を閲覧できるサイト)
https://fred.stlouisfed.org/

■トレード・アドバイス

 経済指標は、GDPと消費者物価指数、製造業指数が判断材料の軸です。各国特徴があり、時期ごとに重要度合いは異なります。今は、製造業ですが、そろそろ、消費物価の注目度が高まる印象です。経済もブームがあり、タピオカの次はこの商品が来る、といったことと同じです(次は免疫を高める、ハチミツ?)。

主要な中央銀行の予想 12月のFOMC予想

「CME FedWatch Tool」のドットチャートから、12月は金融政策維持の予想です。レポートや声明には、「穏やかな回復」の表現が増える予想です。市場はFOMCが導入議論している「イールドカーブ・コントロール」、「マイナス金利」も織り込み始めています。

 直近の景気回復が予想より遅い場合、株価動向から財政出動が促される下落展開には警戒です。

 また、2023年まで実質ゼロ金利が予想され、市場の膠着が懸念材料の1つです。相場の値動きが乏しい地合いになると投資が難しくなるため、ボラティリテイの定点観測は大切です。

【参考】
CME FedWatch Tool(FOMCの金利水準の予測ツール)
https://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html

仮想通貨銘柄の回帰分析とテクニカル分析

 仮想通貨市場は成熟期に突入、CMC Crypto 200 Indexを見ると、ビットコインは短中期BOX基調です。ビットコインは上昇の要因を探しています。アルトコイン、中央銀行デジタル通貨(CDBC)の誕生などから、仮想通貨市場はFX市場など既存市場とのパイの奪い合いが起こる可能性も。

 仮想通貨ヒートマップ(下記リンク参照)を見ても調整からプラス展開の様子です。CME仮想通貨のオプション出来高は増加傾向で、ヘッジファンドなど機関投資家の参入は増えているものの、上値が重い展開です。取引量も乱高下していることから、当面は方向性が見えない印象です。

【参考】
CMC Crypto 200 Index 仮想通貨市場の指標
https://finance.yahoo.com/quote/%5ECMC200/history/
【参考】
仮想通貨ヒートマップ 市場の活況
https://finance.yahoo.com/cryptocurrencies/heatmap?.tsrc=fin-srch
【参考】
仮想通貨のオプションの出来高
https://analytics.skew.com/dashboard/bitcoin-options
【参考】
仮想通貨市場の取引出来高
https://bitcoinization.com/top30crypto-vol.html

NEWS PICK OUT

■(10月2日)欧州中央銀行 デジタルユーロの実験を表明
 欧州中央銀行(ECB)がデジタルユーロの実験を進めるようです。各国の中央銀行が続々と検討の表明をしている「デジタル通貨」は、既存の経済構造との融和が重要となります。

 デジタル通貨の流通までは、発行、決済、通貨量など議論の余地は多く残っています。また、既存のクレジッドカードや電子マネーなどを発行する企業の株価動向にも注意を向ける必要があるでしょう。デジタル通貨は「既存のサービスに付帯される」方向性を予想しており、国内に限らず、国際的な競争に発展する可能性を秘めているため、チャンスを逃すまいと企業間の熾烈な争いが生まれると思います。

 テクノロジーの歴史を振り返ると、勝者の条件は「シンプル且つ早く」です。決済はスピード勝負であり、この条件を軸足にどの企業が頭を抜けてくるか、見定めます。

■(10月5日)TaoTaoとバイナンスの戦略提携は合意に至らず
 国内の仮想通貨取引所TaoTao(タオタオ)と、世界大手仮想通貨取引所であるバイナンスとの提携における交渉が終了しました。交渉がうまくいけば、国内の仮想通貨市場が大きく海外と繋がる期待もありましたが、非常に残念です。

 国内に多くの仮想通貨関連企業は存在するものの、外資系の参入があり、国内で競争が激化し、再編や合併など起きない限り、仮想通貨市場のサービス向上への望みは薄くなっていきます。しばらく、仮想通貨関連の銘柄の株価動向はつまらない結果が続くでしょう。

■(10月9日)日本銀行 2021年度にデジタル通貨の実証実験を予定
 世界と足並みを揃えるように、日銀もデジタル通貨での実験を開始します。デジタル通貨における決済、システムの検証などを民間事業者と組み、また消費者も参加しながら実験するようです。

 政府発行のデジタル通貨誕生となれば、年金や生活保護、給付金などが現金よりも管理しやすくなり、例えば期限内に利用を促す通貨を発行するということも可能です。

 デジタル通貨は国民の消費欲を刺激することに活用できる反面、政治家によるバラマキが多くなる懸念もあります。いずれにせよ「デジタル通貨による新しい消費の形」には期待が高まり、経済的な制度設計は非常に重要な転換点を生み出すと思います。

■(10月13日)デジタル・ペイメントに関するG7声明の公表
 10月に行われたG7財務大臣・中央銀行総裁会議では、デジタル・ペイメント(いわゆるデジタル決済)に関する声明を発表。デジタル・ペイメントが普及することによる金融サービスへのアクセス向上などのメリットを認めつつ、消費者保護やマネーロンダリングなどの対策への必要性も言及されていました。

 ECBのデジタル通貨実験など、国際的にデジタルエコノミーへの議論が本格化していることが分かります。こうした議論の行く先には仮想通貨業界も通らざるを得ないわけで、仮想通貨市場にとっては長期的に見れば、取引高増加など上昇材料として判断できます。

■(10月13日) 中国デジタル人民元 消費者の参加型テスト開始
 中国深センではデジタル人民元のテストが始まっています。市内在住者に総額1千万元に上るデジタル人民元を抽選で発行し、応募倍率は約2倍とデジタル人民元に対する国民の関心の高さもうかがえます。

 中国国内の電子決済サービス企業にとっては、脅威となる可能性もあり、今後の動向に注目です。

 デジタル通貨の普及で、国民すべての決済サービス情報が手元にあるようになると、資金移動は透明になり、「現金は不透明なもの」として評価が変わる可能性があります。金融政策や経済分析の手法にいたるまで、革新するでしょう。今後は民間企業にとって決済サービス情報など、競合が保有していない情報を持っているかどうかが、生死の分かれ目になるかもしれません。

ビットコイン円

 ビットコイン円は、回帰分析では強気範囲(85~137万円台)、回帰直線の付近で価格推移。現時点では「上昇基調の調整」が中長期で続く可能性もあります。長期は積立銘柄として検討できますが、目先の市場ポートフォリオの変化から、直近の目線を再考します。

 テクニカル分析では、移動平均MA21を価格が上回り、短中期のMAはゴールデンクロスで、買いシグナルが点灯。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンはMAと雲を超えて買いシグナルが点灯。短中長期ともに上昇シグナルが現れています。

 回帰直線の付近で調整展開となり、コアBOX103万円台~120万円台を推移しながら、力を溜めている印象です。サイクル&リズム分析では ローソク足は陽線約5本、陰線は3本のリズムを繰り返し調整しながら、直近には転換シグナルの十字線も出現しており、上値120~150万円台に向けて上昇地合いです。フォーメーション分析では下降フラッグを上昇ブレイクとなり、仮想通貨全体を牽引しています。

 一方、オシレーター系のクラシックRSI(相対力指数)は60付近推移、スローストキャスティクスは60付近で推移し、共に50を超えており、「買い継続」の判断材料にも考えられます。

 注目度・先行性を測る出来高は、やや調整気配となり、上昇継続に疑問符です。調整気配が漂います。2017年12月高値から2020年6月を結ぶ中長期トレンドラインは上値抵抗帯をブレイクし、今後は下値抵抗帯として機能します。調整下落時のサポートラインとして注目です。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオは「強気相場の調整」をしながら、上昇展開を待つイメージです。

 110万円台到達から価格推移が安定し、コアBOX102万円台~110万円台で価格推移しながら、上値120~150万円台を目指すシナリオをイメージしています。

 突発的な変化に警戒が必要です。カウンターシナリオは下落展開で、70~85万円台の調整範囲を割り込み、50~70万円台まで下落する弱気シナリオです。カウンターラインは70~80万円台で、そこを下回ると、最悪のケースとして20~30万円台まで利益確定売りが加速する可能性も考えられます。株式市場の連れ安から、コロナ・ショックの下落分、約50万円の下値追いも想定されます。

 グローバルマーケットは株価堅調ながら、直近の米株市場は米大統領選を控えており、目線を探る展開となっています。来年のポートフォリオに、ビットコインがどうなるか、明瞭になる日も近いでしょう。気持ちを新たに挑みましょう。

イーサリアム円

 イーサリアム円は回帰分析では強気範囲(25000~55000円)の付近で価格推移しながら、短中期は上昇展開を予想。直近の上限30000円を超え、上値追い展開です。

 テクニカル分析では、移動平均MA21など短中期のMAはゴールデンクロスで買いシグナル。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンはMA21と雲を上抜け、強気の買いシグナルが現れています。雲から24000~25000円までが調整範囲の目安でもあり、また、サポートラインになります。

 ローソク足は週足に目を向けると陽線5本、陰線3本のリズムで上昇基調。サイクル&リズム分析からは、上放れする予想で、2倍値や3倍値も意識され、55000~65000円の上値も想定できます。フォーメーション分析ではアセンディングトライアングルを形成中で、強気買いシグナルになります。

 中期トレンドラインは、(1)2018年9月安値から2019年12月安値を結び(2)2019年6月高値から2019年2月高値を結びます。(1)(2)の中期トレンドラインから、トライアングルを上値抜け、中長期サポートラインに変化、短中期の上昇シグナル判断です。

 一方、オシレーター系のクラシックRSIは60付近で推移、スローストキャスティクスは50付近で推移しており、共に50を超えて買い継続シグナルとなり、押し目を探る条件が整い、オシレーター系は過熱感が静まりました。

 注目度・先行性を測る出来高は、やや調整シグナリとなり、下値追いに警戒します。基本は上昇継続シグナルです。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオは上昇展開、上値55000~65000円を何度も打診することも考えられますが、展開を慎重に見極める必要があります。カウンターシナリオは回帰直線29000±100円を下値ブレイク、更に雲の付近24000~25000円を割り込む場合、15000~22000円も考えられる弱気シナリオに転換です。

 イーサリアムがDeFi(分散型金融)の熱狂が落ち着き、堅調な上昇局面への移行を示唆しています。グローバルマーケットは米大統領選の通過まで、買い目の様子見となります。来年に向けて、心機一転となり、新しい展開が生まれるため、買い目、打診姿勢でしょう。

リップル円

 リップル円は回帰分析の弱気範囲(20~40円)の付近で価格推移。直近、回帰直線まで調整反落となり、コアBOX23~27円で推移しながら目線を探り、買いシグナルが優勢になる予想をしています。

 テクニカル分析では、価格は移動平均MA21を上回り、短中期のMAはゴールデンクロスとなり、買いシグナル、短期MAは下向きだし調整気配。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンは雲の下にあり、MAを試し、弱気売りシグナル 遅行スパンのWボトム形成となり二番底を作りそうで、強気の上昇シグナルと捉えます。また、MAが雲に突入し、中長期での買いシグナルが現れそうです。

 ローソク足は陰線と陽線、5本のリズムを形成しながら上昇シグナル。サイクル&リズム分析ではリズム変化、ブレイク展開から失速気味です。フォーメーション分析では下降フラッグ形成。(1)2018年9月安値から2019年7月安値を結び、(2)2018年高値から2019年6月高値を結び、(1)(2)の中期トレンドラインは下降推移しており、戻り売りの意識です。ただし、現時点は下値追いが落ちつき横ばい展開しているため、目線を探るのが賢明です。底値形成の可能性が高まっています。

 一方オシレーター系のクラシックRSIは50付近で推移、スローストキャスティクスは40付近で推移から、過熱圏から冷却され、押し目買いのシグナル点灯です。オシレーター系が50付近を維持できず、下値追い展開になれば売りシグナル。

 注目度・先行性を測る出来高は調整傾向になり、強気シグナルに陰りを見せています。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオはコアBOX18~23円で価格推移しながら、力を溜めて、強気の上昇を再開するイメージです。上値40~50円台に向かうことも想定しながら、秋のポートフォリオを構築し、打診を繰り返すことも検討できます。

 カウンターシナリオは、23±1円前後で停滞した価格推移となってしまい、その流れに失望した売りで18円台~20円台を下回り、崩落してゆく悲観シナリオです。

 トレンドブレイクした強気相場から調整相場に移行し、それは短中期で続く可能性があります。グローバルマーケットのポートフォリオ変化から、来年1月まで調整予想となり、ビットコインが強気になり、その影響からアルトコインにも上昇気配が生まれるまで、基本は買い姿勢を堅持しながら、打診を繰り返し、目線を見定めてゆきます。目線が良好になり晴れ渡るのも近いでしょう。

Author

天空の狐

天空の狐

ALTS investor Media 編集部 IFTA国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト、ESTA名誉会員(日本人で唯一)、ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンドプログラム修了。PythonMT4・MT5自動売買&裁量Aiトレーダー。ドイツ企業INTALUS.日本代表を経て、ドイツ金融アルゴリズムTradesignal日本代表に。テクニカル分析やアルゴリズム・ストラテジー開発。ヘンリー・ビジネス・スクールヘッジファンド・プログラムのアドバイザーを従事。ブログ「天空の狐 ビットコイン&グローバルマーケット」、マネーポストWEB執筆中。Twitter:@firmamentfox

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