ロバの冬道 2020年11月中旬から1か月のシナリオ分析

【目次】

  • グローバルマーケットの考察
    1. マーケットメモ
    2. NEWS PICK OUT
    3. 狐のミニミニコラム
  • グローバルマーケットのシナリオ分析
    1. 直近1か月の投資スタンス
    2. ヘッジファンドの投資指針
    3. メインシナリオ
    4. カウンターシナリオ
    5. サブシナリオ

グローバルマーケットの考察

【主要銘柄の先月比変動幅】

  • ■ダウ:+2.79%
  • ■日経:+0.28%
  • ■S&P500:+2.08%
  • ■DAX:+0.44%
  • ■ドル円:-0.78%
  • ■ユーロドル:+0.75%
  • ■ビットコイン円:+41.61%
  • ■ゴールド:-0.18%
  • ■原油:-1.04%
  • ■TLT(債券):-2.17%

※2020年11月17日時点

 先月はリスクオン、株高、ドル安、ビットコイン高、商品安で、現在は株式市場を中心に長期ポートフォリオを全面見直しする必要があるものの、今後の方向性は明瞭になる展開が予想されます。

 Fear&Greed IndexはGreed(貪欲)の60台に推移。VIX(恐怖指数)は23%台で推移。2つの指数から、リスクオン6、リスクオフ4の割合でマーケットの投資割合を観測するといいでしょう。市場心理はやや強気で、安定した価格展開が予想されます。長期的な資産運用を考えるには好機になるでしょう。

【参考】
Fear&Greed Index(リスクオン、リスクオフの判断)
https://money.cnn.com/data/fear-and-greed/
【参考】
CBOE Volatility Index(恐怖指数)
http://www.cboe.com/vix

マーケットメモ

【マーケットメモ(短中期)】

  • ■米大統領選の行方、トランプ・リスク
  • ■11月26日感謝祭、季節アノマリーピークアウト傾向
  • ■新型コロナの欧州第2波、ロックダウンの影響 ↓
  • ■2019年9月、2020年3月のマーケット変化 ☆

【マーケットメモ(長期)】

  • ■コロナ後の世界経済、ワクチンの報道 ↓↑
  • ■FEDバランスシート縮小、米国債の流動性低下 ☆
  • ■世界的な景気対策期待、金融相場から業績相場 ↑↓
  • ■ドル不足、新興国リスク ↓
  • ■中国が先行景気回復、他国の回復予想困難 ↓
  • ■中央銀行デジタル通貨(CDBC)の検証 ↑
  • ■EU離脱、イギリス再交渉 ↑↓
  • ■長期ポートフォリオ検討、4年間のプレジデントサイクル

 米大統領選が終わり、民主党のバイデン候補が新大統領になりそうです。一方で共和党のトランプ陣営による選挙不正の訴訟も懸念されており、新政権への移行が不透明な部分もあります。念のためトランプのツイートリスクには警戒を怠らないようにしましょう。

 さらに例年、市場へ影響を与えるのが11月26日の感謝祭でマーケットピークを迎えることで、この季節要因は注意が必要です。

 目先のマーケットはコロナ後の経済やバイデン政権を前提とした展開です。各国政府による金融緩和、財政出動期待から、株高とドル安は維持されつつも、欧州ではコロナ第2波の影響で弱気も見え、ユーロ安になっています。中国は先行して景気回復入りし、アジア市場全体を見ても、投資家から価値の見直しがされ始めています。日本も従来の株高・円安構造とは異なりますが、株式市場は堅調に推移しています。

 世界の株価にはワクチン開発の期待が過剰に織り込まれている節も見え、市場心理が適温に移行したとき、新しい市場構図を探るでしょう。

 株式市場は上昇継続のシナリオは継続する可能性が高いものの、過熱感もあり、飽和状態になるかもしれません。来年2021年は株式市場が緩やかに各市場を牽引しながらも、FX市場が盛り上がりを見せると予想しています。ドル安を軸に、資源国通貨であるAUD、NZD、CADペアに注目が集まり、商品市場のヘッジ見直し、ゴールド・原油動向の低下、仮想通貨市場の選好が高まる可能性をイメージしています。

■トレード・アドバイス

 マーケットメモを見ながら、このニュースが来れば、上昇するだろう、下落するだろうという目星をつけ、そのときどのような投資を行うか、リストアップすることをおススメします。

【参考】
Composite leading indicator(OECD景気先行指数)
https://data.oecd.org/leadind/composite-leading-indicator-cli.htm
【参考】
MSCI ACWI Index(世界株価指数)
https://www.msci.com/acwi
【参考】
S&Pグローバル総合指数(米ドル建て)
https://japanese.spindices.com/indices/equity/sp-global-bmi-usd

 Composite leading indicator(OECD景気先行指数)は99で前回より+1増加と回復基調で、半年以降の見通しは明るいことを示唆しています。MSCI ACWI Index(世界株価指数)も600台に乗せ、歴史的高値を更新。S&Pグローバル総合指数(米ドル建て)は、月初来リターンは+9.18%とプラス展開です。前回の3%台から堅調推移です。

 マーケットメモの総括としては、世界経済は回復傾向を強めながら、コロナ後の世界との対話が続きます。当面は米国と中国の経済・政治動向を見守ります。

 長期投資サイクル、新しい投資シナリオを固めてゆきます。見通しの中に、新しい火種が生まれる気配もあり、各市場の構図変化から、目線を仕分けてゆく時期です。

■トレード・アドバイス
 全体を俯瞰する視野と共に、細かいデータも見る習慣作りが大切です。これは天空の狐スタイルなので、自分に合うスタイルを模索してみてください。頭の整理と共に、上昇・下落・様子見といった投資行動の目線を定めることが肝になります。

NEWS PICK OUT

■(10月20日)米司法省がGoogle提訴 独占禁止法 検索情報の変化
 米司法省はGoogleを反トラスト法(日本で言う独占禁止法に近い)で提訴。アメリカの検索市場とそれに伴う広告市場に関し、Googleがシェアを独占的に維持しているのではという指摘がされました。

 いち時代のIT企業の成長がひと回りし、規制により転換を向かえた印象です。ある分野が成長期から成熟期へ向かうことは、別の分野で新たな扉が開く可能性も示唆しており、今後の新しいトレンドを生みそうな銘柄選びに力が入ります。やはり仮想通貨やブロックチェーン関連にはまず注目しています。

■(11月9日)米ファイザーによる新型コロナウイルスに対するワクチン開発の期待
 アメリカの製薬企業ファイザーが、新型コロナウイルスのワクチン治験で、予防の有効性が90%を超えたと発表。これは株式市場にもプラスに働き、今後も温和な株価推移が予想されます。他にもアメリカではワクチンの利用が来年に見通されるなど、プラス要因が次々とマーケットの価格に織り込まれていきます。

 市場が緩やかながら堅調に推移し、利確による下落幅も現状ではそれほど大きく見られていません。株価選好が強まり過ぎ、他市場への投資も検討がされ始める頃です。

■トレード・アドバイス
 報道を見たら、投資行動のシナリオを描きましょう。分析⇒投資の手順を踏むことが重要です。目先の相場に惑わされず、心身を整えて、データと共に相場へ向き合います。日々の報道から、上昇要因、下落要因、様子見と3つの投資指針をしっかり持つことで、瞬発的に動くとき・休むときのメリハリが生まれます。

狐のミニミニコラム

 昔はラジオで投資情報を得ていたのですが、今はオンライン講座が充実しているため、ラジオのよう聴きながら色々と受講しています。動画は自分で選んで見る時代になり、技術系の人はGitHubの交流で新しい知識を得て、問題解決にTwitterで検索するなど、様々なツールを活用し能動的に情報を得るのが当たり前になっています。

 ラジオのコンテンツの素晴らしさは認めつつも、知識や情報を能動的に摂取する際には、動画やTwitterに比べると見劣りする面もあると思います。また、双方向性に関しても、WEBの方が少し便利かなとも個人的には感じました。

 新型コロナウイルスにより、人々の生活様式が変化し、投資行動や投資時間も含め、様々な点で新しい変化がないか、アンテナを張っておこうと思います。

グローバルマーケットのシナリオ分析

直近1か月の投資スタンス

【長期目線の審議】

 11月26日の感謝祭までに、来期のポートフォリオをある程度見定めます。景気サイクルから、新たな方向への打診が始まっている印象です。各国政府の景気刺激策による相場への買い材料、欧米でのコロナ第2波を警戒する売り材料もあり、見えている売買材料は株価に織り込まれ、長期的な目線への打診が正しいか、市場の選好先などもチェックしつつ、検討します。

 マーケットは金融緩和と財政出動から株高、ドル安が継続。もしゴールドに変化があれば、各市場の方向性にも変化が現れるかもしれません。

ヘッジファンドの投資指針

【ヘッジファンドの投資指針】

  • ■ヘッジファンドは2018年以来のドル売り、継続的なドル安見通し
  • ■マーケットのポートフォリオの変化
  • ■ヘッジファンドの原油ポジション解消傾向

 ヘッジファンド、インディケーターの順でパフォーマンスを見ていくと、今後の投資戦略が見えてきます。相場戦略、アービトラージ、ロング&ショート、マクロ戦略は堅調なパフォーマンスを示していますが、イベント・ドリブンなどの戦略はマイナスパフォーマンスです。

 来期に向けて、買い・売りが明瞭になり、直進的な姿勢も感じられるものの、当面ヘッジファンドのパフォーマンスはやや低下しそうです。ヘッジが必要な地合いになるかはTLT(債券価格)の動向から見定めます。

 Eurekahedge Hedge Fund Indexの10月評価が+0.05%、自動売買のEurekahedge AI Hedge Fund Indexが-0.55%、仮想通貨はEurekahedge Crypto-Currency Hedge Fund Indexの+9.23%と、全体的にパフォーマンスは鈍化傾向。AIファンドのパフォーマンス低下など、投資戦略の見直しが始まっています。

【参考】
Eurekahedge Hedge Fund Index(ヘッジファンドのパフォーマンス)
https://www.eurekahedge.com/Indices

 SG TREND INDICATORから過去1か月間の市場評価は+1.16%と回復傾向、自動売買のSG CTA Indexは+0.11%、株価は+0.13%、FXは+1.98%、債券が-0.67%商品は‐0.13%で、全体のポートフォリオは+1.29%です。回復ながら、直近は買いだけ戦略だと、パフォーマンスが低下。市場の選定、目線を切り替えなども検討です。

【参考】
SG TREND INDICATOR(プライムサービスのインディケーター)
https://cib.societegenerale.com/fileadmin/indices_feeds

■トレード・アドバイス1

 ヘッジファンドのデータベースから、彼らの姿勢や目線、有効戦略が見えたら、同じようにするのか、それとも裏をかくかなど、現在のマーケットに有用な投資戦略が見えてきます。そして、どの市場のボラティリティが強くなるか、弱くなるかを見極めることにも繋がります。

 プロが攻める市場、逃げる市場が分かれば、どこを主戦上とし、どんな戦略で挑むかを探る手助けになり、自ずと戦いやすい市場を見つけることに繋がります。

■トレード・アドバイス2

 国際通貨先物市場(IMM)データをもとに、FXに役立つ情報を得ることも可能です。2020年11月7日週時点のデータとIG Client Sentimentも参考に、ドル円とユーロドルを見ていきましょう。

・ドル円:売りポジション弱い、買いポジション増加⇒買い反発気配、買い目、中立目線
【買いポジション62%/売りポジション38%:買い優勢】

・ユーロドル:買いポジション増加、調整気配⇒買い強気、買い目、上目線
【買いポジション31%/売りポジション69%:売り優勢】

【参考】
国際通貨先物市場(IMM) 通貨の建て玉(ポジション)の残高 プロの長期目線
https://www.cftc.gov/MarketReports/CommitmentsofTraders/
【参考】
IG Client Sentiment 売買ポジション動向 個人投資家の短期目線(IG口座保有者に限る)
https://www.dailyfx.com/sentiment

 ヘッジファンドや機関投資家、投機筋の買い・売りにおける保有ポジションの状況から為替相場の動向を予想をします。IMMデータは「前週における分析結果」なので、現在のチャート動向との比較が大切です。

 データ比較から(1)から(4)の投資行動が考えられます。また、これらは中長期ポジションの目線であり、「自身の短期目線と同じかどうか」など投資姿勢の確認にも有効です。

(1)買いポジション過熱:下落の可能性⇒様子見・調整・転換を見極め、売り目検討もしくはシナリオの再考
(2)買いポジション継続:トレンド継続⇒打診・追撃・利益確定を検討でき、好機継続
(3)売りポジション過熱:上昇の可能性⇒様子見・調整・転換を見極め、買い目検討もしくはシナリオの再考
(4)売りポジション継続:トレンド継続⇒打診・追撃・利益確定を検討でき、好機継続

※(1)と(3)は「シナリオの再考」、(2)と(4)は「好機継続」と考えられます。

メインシナリオ

【新ポートフォリオ構築と打診 】

 11月26日の感謝祭までに、新たなポートフォリオ構築や打診の目線を見定めます。

 民主党政権によるグローバルリズムへの回帰となり、新しい経済サイクルを探ります。次なる投資市場を選定です。米株市場の飽和状態からアジア株、FX市場、資源通貨、仮想通貨市場への物色打診が始まります。

 株式市場は「株高継続シナリオ」、「コロナによる企業体力の強化」で、「企業合併の話題」にも注目です。ドル安傾向により「ヘッジとしての金」が徐々に外され、商品市場は低迷。為替相場は隆盛となり、ドル安、ユーロ高、資源通貨高などドル以外の他通貨への関心も高まっています。ドル安による新興国リスクにより、仮想通貨も選好せれ、新しいポートフォリオが生まれるシナリオです。

 第4四半期(10月~12月)を迎え、各市場の目線を打診しながら、頭の片隅には12月クリスマス休暇を意識しながら投資することになります。すでに2020年1月上旬にオリジナル変化日が点灯しており、12月の相場は荒れる兆しも。

 上なのか、下なのかという目線の判断材料として、ドルインデックス(DXY)を活用できそうです。90~91を割り込み88台への展開になれば、市場全体の選好が明瞭になると思われます。また、ゴールドがコアBOXである1850~1950をどちらかにブレイクすれば、投資配分先が確定する可能性があります。

カウンターシナリオ

【新型コロナウイルスの第2波 悲観シナリオ】
(1)新型コロナウイルスの第2波、欧米経済の動向
(2)新型コロナウイルスが新興国(アフリカなど)で蔓延し、再度、先進国での感染拡大のシナリオ
(3)ウイルスが突然変異して、新たな感染が発生。マーケットは悲観売り加速(マレーシア、デンマークでは既に変異体を確認)

(1)(2)(3)は市場にも織り込まれていたものの、欧米のロックダウンによる経済鈍化の懸念から、景気見通しが不透明になっています。株高先行のブレーキ材料として大きく意識され始めたとき、利確の下落調整に警戒です。

 思いがけないブラックスワン(突発的な下落要因)が誕生する可能性は否定できません。新興国の債務超過、銀行・企業倒産などによる崩落マーケットもシナリオとしてはあり得ます。

 再生系ヘッジファンドの動向などから予兆を探る準備はしています。

サブシナリオ

 市場構造の変化による「セルザファクトとアルゴリズムの相場」というシナリオも考えられます。

 各国金融政策による株高・ドル安でありながら、次の期待できる市場がどこかを試す動きも活発です。市場変化に耐えられず、企業倒産や合併交渉の破談などによる悲観材料が出現すると、アルゴリズムが下落相場を形成する可能性も考えられます。

 ワクチン報道が株式市場はプラスに働き、楽観的な思想も織り込まれた株価推移ですが、セルザファクト、アルゴリズムによる下落相場が発生した時には、警戒が必要です。

Author

天空の狐

天空の狐

ALTS investor Media 編集部 IFTA国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト、ESTA名誉会員(日本人で唯一)、ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンドプログラム修了。PythonMT4・MT5自動売買&裁量Aiトレーダー。ドイツ企業INTALUS.日本代表を経て、ドイツ金融アルゴリズムTradesignal日本代表に。テクニカル分析やアルゴリズム・ストラテジー開発。ヘンリー・ビジネス・スクールヘッジファンド・プログラムのアドバイザーを従事。ブログ「天空の狐 ビットコイン&グローバルマーケット」、マネーポストWEB執筆中。Twitter:@firmamentfox

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