2020年11月中旬からの短中期マーケットの定量分析

【目次】

  • オリジナル定量分析
    1. 変化日
    2. マーケット構図
    3. 主要市場 回帰分析
    4. 市場分析の判断指針
    5. 注目 経済指標
  • 仮想通貨銘柄の回帰分析とテクニカル分析
    1. NEWS PICK OUT
    2. ビットコイン円
    3. イーサリアム円
    4. リップル円

オリジナル定量分析

変化日

 変化日からマーケットの値動きを想定します。

  • ■為替相場:11月17日、20日
  • ■商品市場:12月7日、1月2日
  • ■仮想通貨市場:12月7日、16日
  • ■株式市場:11月16日、20日、1月10日
  • ■債券市場:12月10日、1月4日

寸評:変化日が散在しながら点灯しており、効果的でない可能性もあり。12月7日前後は強く点灯しており、市場転換を意識したい。また1月の変化日も点灯しており、12月の市場はボラティリティが高い可能性があります。

※11月17日時点、変化日とはオリジナルの定量分析で「マーケットシナリオを再考して、戦略を考え直す日」

マーケット構図

 マーケット構図は株高、ドル安の基本構図が継続。株式市場は成長株と割安株の組み換えが進み荒れ気味、為替市場はドル安傾向、円やスイスフランの動向からリスクオンと判断。債券市場も金利低下(債券価格上昇)、商品市場はボラティリティが低下、ゴールドの目線が決まれば市場構図は決定的になります。仮想通貨市場はビットコイン高、アルトコイン高で高値圏を探る状態。

 マーケット構図から市場選好が変化しており、投資環境は固まりつつあります。

  • ■リスクオフ要素:ゴールド ビットコイン、ジャンク債(HYG)、CDS、TEDの監視、特にTLTの流動性、DXY(ドルインデックス)のドル安展開、スイスフランや円も定点観測銘柄に追加
  • ■リスクオン要素:各国の緩和、景気刺激策、債券市場の変化
【参考】
finviz (株式市場の銘柄構成をヴィジュアルで確認しやすいサイト)
https://finviz.com/map.ashx?t=geo&st=w4

■トレード・アドバイス
 マーケット構図を把握することで、「投資シナリオを維持するか、再考するか」の判断ができます。例えば、基本構図が株高・ドル安で、次の日が株高・ドル高になれば、投資は様子見し、市場変化を見極める、という行動に移れます。

主要市場 回帰分析

スタンス トレード目線 カウンターライン
(orコアBOX)
価格推移予想BOX
TLT 強気・調整 下落基調 173±50 150.00~171.00
ダウ 強気 上昇基調 25000±100 23000~32000
S&P500 強気 上昇基調 3000±100 3000~4000
日経平均 強気 上昇基調 21000±50円 20000~27000円
DAX 強気 上昇基調 10800±50 10000~15000
EUR/USD 強気・調整 上昇基調 1.3000±50 1.1400±50~
1.2300±50
USD/JPY 弱気 下落基調 106.50±50円 102.50±50~
107.00±50円
BTC/JPY 強気 上昇基調 90万円台±10万円 100~220万円台
GOLD 中立・調整 BOX基調 コアBOX
1800±50~2064±50
1650~2200
原油 中立目線 BOX基調 コアBOX
32±1~45±1
33.00~55.00

※カウンターライン=投資目線を切り替える水準、損切ラインの参考値

※コアBOX=節目としての価格帯
※2020年11月17日時点

 全体的に目線策定と配分検討の時期となり、基本姿勢は強気を軸にします。新しい投資配分先の選定が必要で、投資の矛先をどこに向けるか検討。新たな景気サイクルの起点を見定めようと思います。

市場分析の判断指針

 ファンダメンタルとアルゴリズム(自動売買)の分析を比較して、現状6対4でややファンダメンタルを優先して判断します。市場心理は様々な材料が織り込まれ緩やかな堅調ですが、新規材料が現れたときの反応に注意しましょう。株式市場や経済指標から、長期の目線を優先して判断します。

注目の経済指標

 当面、中国や米国の景気回復度合いを見比べます。製造業PMIから、中国は10月のPMIが51.4で、米国は11月のPMIが53.4となり、共に景気拡大の50を上回る結果でした。消費者物価指数(CPI)は中国が10月は0.5%で、米国も1.2%と低い結果に(人民元やドル売り材料にも)。両国ともインフレリスクは低下傾向です。

 中国による景気の牽引が強まる一方、欧米のコロナ第2波による景気鈍化シナリオにも注意が必要です。「半年後の経済シナリオは楽観的だろう」という考えには疑問が生まれつつあります。

【参考】
AssetMacro(マクロ経済データを閲覧できるサイト)
https://www.assetmacro.com/
【参考】
FRED(経済データ関連を閲覧できるサイト)
https://fred.stlouisfed.org/

■トレード・アドバイス

 経済指標は、GDPと消費者物価指数、製造業指数が判断材料の軸です。各国特徴があり、時期ごとに重要度合いは異なります。今は、製造業ですが、そろそろ、消費物価の注目度が高まる印象です。経済もブームがあり、タピオカの次はこの商品が来る、といったことと同じです(次は免疫を高める、ハチミツ?)。

主要な中央銀行の予想 12月のFOMC予想

「CME FedWatch Tool」のドットチャートから、12月は金融政策維持の予想です。レポートや声明には、「穏やかな回復」の表現が増える予想です。市場はFOMCが導入議論している「イールドカーブ・コントロール」、「マイナス金利」も織り込み始めています。

 直近の景気回復は堅調ながら、コロナ第2波への警戒もあり、「財政出動を促そうとする株価下落」には警戒です。

 また、2023年まで実質ゼロ金利が予想され、市場の膠着も懸念材料の1つです。株式から、他市場への選好気配が強まっており、ポートフォリオの選定が重要になります。

【参考】
CME FedWatch Tool(FOMCの金利水準の予測ツール)
https://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html

仮想通貨銘柄の回帰分析とテクニカル分析

 仮想通貨市場は成熟期に突入、CMC Crypto 200 Indexを見ると、ビットコインは短中期の上昇基調に転換です。アルトコインも牽引され軒並み上昇基調です。現状は仮想通貨市場は選好されて、上昇しています。

 仮想通貨ヒートマップ(下記リンク参照)を見ても軒並みプラス展開の様子です。CME仮想通貨のオプション出来高は緩やかな増加傾向で、ヘッジファンドなど機関投資家の参入は増えているものの、打診的なポジション量の報告ばかりです。取引量は増加傾向にあり、銘柄全体で上昇基調の展開で、中長期で継続しそうな地合いです。

【参考】
CMC Crypto 200 Index 仮想通貨市場の指標
https://finance.yahoo.com/quote/%5ECMC200/history/
【参考】
仮想通貨ヒートマップ 市場の活況
https://finance.yahoo.com/cryptocurrencies/heatmap?.tsrc=fin-srch
【参考】
仮想通貨のオプションの出来高
https://analytics.skew.com/dashboard/bitcoin-options
【参考】
仮想通貨市場の取引出来高
https://bitcoinization.com/top30crypto-vol.html

NEWS PICK OUT

■(10月21日)PayPal 仮想通貨の売買サービスに対応へ
 PayPalが、同社サービスを通して、仮想通貨の購入や保有などを可能にする方針であると発表。PayPalは世界で3億人を超える利用者がいるといわれ、それだけ多くのユーザーがいる市場で仮想通貨の利用がされるようになれば、業界促進のスピードアップになります。

 仮想通貨が既存サービスとの連携をしながら、利用者数を増やすことになれば、仮想通貨の新サービスを模索する企業も増えるでしょう。そうした企業は投資対象になり得ますので、注目する価値はあります。

 米株市場の成長株に対する投資は頭打ちになっている側面も見られ、新しい投資先となる企業銘柄を探す上で、利用者数増が期待できる仮想通貨やブロックチェーンの技術は参考にできます。

■(11月3日)欧州中央銀行 デジタルユーロのスタートまで2~4年必要
 欧州中央銀行(ECB)は中銀発行のデジタル通貨(CDBC)として、デジタルユーロを検討していますが、マネーロンダリング等の対策への準備を含め、2~4年は時間が必要とコメント。

 各国の中銀がCDBC導入への道を模索していますが、安全に且つ主導権を握りながら、どのように導入するかが課題でしょう。法定通貨に限らず仮想通貨との兼ね合いもあるため、3つの通貨がどう流通していくかは注目です。いずれにせよ長期的な代替投資先として選好されていく可能性に期待でき、新しい資産形成の銘柄になると考えています。

ビットコイン円

 ビットコイン円は、回帰分析では強気範囲(100~170万円台)で価格推移。中長期で上昇基調と予想しており、長期は積立銘柄として検討できますが、投資家の長期ポートフォリオが変化する兆しも見られるため、現状は慎重姿勢です。選好された場合は上昇要因と判断します。

 テクニカル分析では、移動平均MA21を価格が上回り、短中期のMAはゴールデンクロスで、買いシグナルが点灯。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンはMAと雲を超えて買いシグナルが点灯。短中長期ともに上昇シグナルが現れています。

 回帰分析から、強気範囲を超えての過熱気味であり、137万円台の回帰直線付近に向かう調整も考えられます。サイクル&リズム分析では ローソク足は陽線約5本、陰線は3本のリズムを繰り返し調整しながら、継続的な展開を予想、上値160~200万円台に向けて上昇地合いです。フォーメーション分析では下降フラッグを上昇ブレイクとなり、仮想通貨全体を牽引しています。

 一方、オシレーター系のクラシックRSI(相対力指数)は80付近推移、スローストキャスティクスは90付近で推移しており、利確からの調整で、一旦137万円台などを見る可能性も頭の片隅に。

 注目度・先行性を測る出来高は上向きつつあります。2020年2月高値と2020年10月高値を結ぶ短期トレンドラインをブレイクしたので、今後は調整下落の価格目途、また下値抵抗帯として機能します。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオは強気の上昇展開です。直近、100~160万円台で足場を固めて、上値170~200万円台に目指すシナリオをイメージしています。

 カウンターシナリオは下落展開で137万円台を割り込み、さらに100万円台を割り込むと下落加速50~70万円台までも見える弱気シナリオです。

 グローバルマーケットは株価堅調ながらも、株式市場は飽和状態で、ドル安がメインシナリオです。ドルインデックス(DXY)90~91を割り込み、次に88台に向かう展開になれば、来年のポートフォリオでは、ビットコインが次の投資先として選好される可能性もあり、上昇が加速するシナリオも考えられます。これからはポジション管理が非常に難しい展開が予想されます。

イーサリアム円

 イーサリアム円は回帰分析では強気範囲(40000~55000円)の付近で価格推移しながら、短中期は上昇展開を予想。直近の上限30000円を超え、上値追い展開です。

 テクニカル分析では、移動平均MA21など短中期のMAはゴールデンクロスで買いシグナル。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンはMA21と雲を上抜け、強気の買いシグナルが現れています。雲から24000~25000円までが調整範囲の目安でもあり、サポートラインとしても機能します。

 ローソク足は週足に目を向けると陽線5本、陰線3本~4本のリズムで上昇基調。サイクル&リズム分析からは、継続的な上昇リズムとなり、2倍値や3倍値も意識され、55000~65000円の上値も想定できます。フォーメーション分析ではアセンディングトライアングルを形成中で、強気買いシグナルになります。

 中期トレンドラインは、2020年2月高値から2020年8月高値を結んだ短中期トレンドラインから、短期の上値抵抗帯として目標値としても見え、これを抜けた場合は短中期サポートラインに変化します。目先上昇が継続性するのか、という判断基準となります。

 一方、オシレーター系のクラシックRSIは67付近で推移、スローストキャスティクスは57付近で推移しており、共に50を超えて買い継続シグナルとなり、押し目としても好条件です。オシレーター系は過熱感の調整を終えた印象です。

 注目度・先行性を測る出来高は、やや弱いシグナル。基本は上昇継続シグナルです。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオは上昇展開、上値55000~65000円を何度も打診することも考えられますが、展開を慎重に見極める必要があります。

 カウンターシナリオは回帰直線29000±100円を下値ブレイク、更に雲の付近24000~25000円を割り込む場合、15000~22000円も考えられる弱気シナリオに転換です。

 イーサリアムはDeFi(分散型金融)の熱狂が落ち着き、堅調な上昇局面への移行を示唆しています。また、ビットコイン上昇に牽引されており、ビットコインの調整時には警戒が必要です。イーサリアムの評価が見直され、長期的な買い転換になる予想です。

リップル円

 リップル円は回帰分析の強気範囲(20~35円)の付近で価格推移。直近、回帰直線まで調整反落となり、コアBOX23~27円で推移しながら強気になり、買いシグナルが優勢になると予想しています。

 テクニカル分析では、価格は移動平均MA21を上回り、短中期のMAはゴールデンクロスとなり、買いシグナル。長期MAは収束してBOX気配。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンは雲の下にあり、ブレイク後は上昇加速、MAは上回り、強気買いシグナル。遅行スパンのWボトム形成となり二番底を作りそうで、強気の上昇シグナルと捉えます。また、MAが雲に突入し、中長期での買いシグナルが現れそうです。雲のネジレから1月11~18日前後には価格展開が変化する可能性を示しています。

 ローソク足は陰線と陽線共に5本のリズムを形成し、上昇シグナルが継続です。サイクル&リズム分析ではリズム変化、ブレイク展開から失速気味です。フォーメーション分析では下降フラッグ形成。(1)2018年9月安値から2019年7月安値を結び、(2)2018年高値から2019年7月高値を結び、(1)(2)の中期トレンドラインの上値抵抗帯に向けて上値打診を繰り返しながらのBOX展開です。買い目姿勢で、買い場を探るのが賢明です。底値形成の可能性が高まっています。

 一方オシレーター系のクラシックRSIは56付近で推移、スローストキャスティクスは30付近で推移から、過熱圏から脱却し、押し目買いのシグナル点灯です。オシレーター系が50付近を超えて、上昇継続シグナルに転換するか、50付近で停滞することでBOX展開の可能性を示唆するシグナルです。

 注目度・先行性を測る出来高は調整から強気シグナルに転じています。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオは20~30円台で価格推移しながら、強気の上昇基調へ転換するイメージです。上値40~50円台に向かうことも想定しながら、秋のポートフォリオを構築し、打診を繰り返すことも検討できます。

 カウンターシナリオは、23±1円前後で停滞した価格推移となってしまい、その流れに失望した売りで18~20円台を下回り、崩落してゆく悲観シナリオです。

 トレンドブレイクで突入した強気相場から調整相場に移行した場合、その調整はそれなりに続く可能性があります。ビットコインの強気が維持され、その影響からアルトコインにも上昇気配が生まれるまで、基本は買い姿勢を堅持しながら、打診を繰り返し、目線を見定めてゆきます。目線が良好になり晴れ渡るのも近いでしょう。

Author

天空の狐

天空の狐

ALTS investor Media 編集部 IFTA国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト、ESTA名誉会員(日本人で唯一)、ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンドプログラム修了。PythonMT4・MT5自動売買&裁量Aiトレーダー。ドイツ企業INTALUS.日本代表を経て、ドイツ金融アルゴリズムTradesignal日本代表に。テクニカル分析やアルゴリズム・ストラテジー開発。ヘンリー・ビジネス・スクールヘッジファンド・プログラムのアドバイザーを従事。ブログ「天空の狐 ビットコイン&グローバルマーケット」、マネーポストWEB執筆中。Twitter:@firmamentfox

keyboard_arrow_up