2021年7月中旬からの短中期マーケットの定量分析

【目次】

  • オリジナル定量分析
    1. 変化日
    2. マーケット構図
    3. 主要市場 回帰分析
    4. 市場分析の判断指針
    5. 注目 経済指標
  • 仮想通貨銘柄の回帰分析とテクニカル分析
    1. NEWS PICK OUT
    2. ビットコイン円
    3. イーサリアム円
    4. リップル円

オリジナル定量分析

変化日

 変化日からマーケットの値動きを想定します。

  • ■為替相場:8月2日、12日
  • ■商品市場::9月2日
  • ■仮想通貨市場:7月19日、30日
  • ■株式市場:8月1日、16日
  • ■債券市場:8月11日、20日

※7月19日前後、8月月初の点灯は夏枯れ相場入りのサインとも考えられます

※7月18日時点、変化日とはオリジナルの定量分析で「マーケットシナリオを再考して、戦略を考え直す日」

マーケット構図

 市場構図が一新される気配です。株価調整、ドル高、TLT(債券価格)は反発気配。ゴールドは下落、原油は上昇、資源通貨高、ビットコイン安と、市場構図の目線を探る地合いとなり、各市場の構図は業績相場への移行局面と考えられます。

  • ■リスクオフ要素:ジャンク債(HYG)、CDS、TEDの監視、特にTLTの流動性
  • ■リスクオン要素:各国の緩和、景気刺激策
【参考】
finviz (株式市場の銘柄構成をヴィジュアルで確認しやすいサイト)
https://finviz.com/map.ashx?t=geo&st=w4

■トレード・アドバイス
 マーケット構図を把握することで、「投資シナリオを維持するか、再考するか」の判断ができます。例えば、基本構図が株高・ドル安で、次の日が株高・ドル高になれば、投資は様子見し、市場変化を見極める、という行動に移れます。

主要市場 回帰分析

スタンス トレード目線 カウンターライン
(orコアBOX)
価格推移予想BOX
TLT 強気 上昇基調 135±50 135.00~151.00
ダウ 強気、中立気配 上昇基調 31100±100 31100~38500
S&P500 強気 上昇基調 3900±100 3900~4700
日経平均 中立 中立目線 (コアBOX)27700±50円~29900±50円 27700~29900円±50円
DAX 強気、中立気配 上昇基調 14500±50 14500~16500
EUR/USD 弱気 下落基調 1.2250±50 1.1650±50~
1.2300±50
USD/JPY 強気、中立気配 上昇基調 108.30±50円 108.80±50~
111.80±50円
BTC/JPY 弱気 下落基調 470万円台 310~470万円台
GOLD 弱気 下落基調 1760±50 1760~1870
原油 強気、調整警戒 上昇基調 64±2 64.00~82.00

※カウンターライン=投資目線を切り替える水準、損切ラインの参考値

※コアBOX=節目としての価格帯
※2021年7月16日時点

 TLTは買われ、米株高となり、回帰分析から日経は中立、DAXもやや中立気配です。ドルは方向感なくし、ドル円は中立気配、ユーロドルは目線を弱気へ、ビットコインは中立姿勢、ゴールドは上昇再開、原油は調整気配。総じて市場はテーパリング相場、夏枯れに向かっていると思われます。

市場分析の判断指針

 ファンダメンタルとアルゴリズム(自動売買)の分析を比較して、現状8対2でファンダメンタルを優勢に判断します。主要中央銀行ではテーパリング議論が始まったことで、市場の組み換え・調整の恐怖に怯えながら、銘柄選定、戦略の再考が求められます。ポジションサイズは打診レベル1/15~1/10サイズに引き下げです。エントリーは慎重姿勢で打診、短期が基本で、夏枯れを意識しながら、様子見が増える可能性もあります。上目線は4、下目線は6の割合でポートフォリオを構築しようと思います

注目の経済指標

 当面、中国や米国の景気回復度合いを見比べます。6月の製造業PMIは中国が51.3と低下、米国は62.6と続伸し、需要急増。共に景気拡大の50を上回る結果ながら、中国の回復がやや鈍化した内容です。消費者物価指数(CPI)は中国が1.1%低下で、米国は5.4%続伸、インフレリスクの警戒を強めた印象です。

 世界各国の経済回復への満足と、新型コロナ感染者数再拡大の不満がマーケットに混在しており、短期は株価の上値が重い展開が予想されます。中国の回復にブレーキがかかり、景気鈍化が鮮明になれば下落に警戒です。長期的に上昇基調であっても、超短期の売り幅によって損失を生み出しやすい展開となりそうです。

【参考】
AssetMacro(マクロ経済データを閲覧できるサイト)
https://www.assetmacro.com/
【参考】
FRED(経済データ関連を閲覧できるサイト)
https://fred.stlouisfed.org/

■トレード・アドバイス

 経済指標は、GDPと消費者物価指数、製造業指数が判断材料の軸です。各国特徴があり、時期ごとに重要度合いは異なります。今は、製造業ですが、そろそろ、消費物価の注目度が高まる印象です。経済もブームがあり、タピオカの次はこの商品が来る、といったことと同じです(次は免疫を高める、ハチミツ?)。

主要な中央銀行の予想 2021年9月のFOMC予想

「CME FedWatch Tool」のドットチャートから、9月のFOMCは現状維持を予想。テーパリングのアナスンスが予想されます。ドットチャートが変わったことにも注目です。

 FRBのテーパリング開始時期の議論と共に、主要中央銀行の中でも資産買入を停止するなど、テーパリングに踏み込み、市場との対話が本格化していきそうです。インフレリスクへの警戒もありながら、ドルBOX展開が続けばインフレの影響は緩やかになる見通しです。

【参考】
CME FedWatch Tool(FOMCの金利水準の予測ツール)
https://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html

仮想通貨銘柄の回帰分析とテクニカル分析

 仮想通貨市場はCMC Crypto 200 Indexを見ると、ビットコイン、アルトコインは横ばいで推移しています。現状の仮想通貨市場はドルの方向を見極める局面で、停滞が予想されます。

 仮想通貨ヒートマップ(下記リンク参照)を見ると、下落調整色を強めています。CME仮想通貨の各オプション出来高は取引量の低下が見られます。ボラティリティが落ち着いて、他市場に関心が向かっている印象です。

 仮想通貨市場の再開は、ドルインデックス、ゴールドの見通しが明瞭になったかで判断します。市場全体で新しい選好先を探る動きを見せています。

【参考】
CMC Crypto 200 Index 仮想通貨市場の指標
https://finance.yahoo.com/quote/%5ECMC200/history/
【参考】
仮想通貨ヒートマップ 市場の活況
https://finance.yahoo.com/cryptocurrencies/heatmap?.tsrc=fin-srch
【参考】
仮想通貨のオプションの出来高
https://analytics.skew.com/dashboard/bitcoin-options
【参考】
仮想通貨市場の取引出来高
https://bitcoinization.com/top30crypto-vol.html

NEWS PICK OUT

■6月29日  bitFlyerでポルカドット(DOT)の取引可能に
 ポルカドットが注目を集めています。ポルカドットは複数のブロックチェーン間の相互接続を目指すプロジェクトで、そのために発行されたブロックチェーンでもあります。

 分散型WEB3.0を標榜しており、これはユーザー同士で情報を管理しようとする非中央集権型の社会。この目標を実現するためのポルカドットは昨年8月に登場し、取引量も増加傾向にあります。

 ユーザー同士で情報が分散管理されれば、一企業への情報の集約を防ぎ、不正アクセスやデータ改ざんリスクの軽減も目指せます。ポルカドットにより、個人情報の保護を新しい方法で実現できるかもしれません。

■7月13日 国内でオントロジー(ONT)の取引開始
 オントロジーも分散型の情報管理を目指すブロックチェーンです。オントロジーの提供会社はドイツ自動車メーカーのダイムラー社ともパートナーシップを結んでいるようです。

 オントロジーはデータベース管理のシステムとして期待されます。例えば契約情報、売買の所有権限者など、堅牢なシステムの下で保護されるべき情報を管理できるようになれば、オントロジーの利用も広がっていくでしょう。

ビットコイン円

 ビットコイン円は、回帰分析では弱気範囲(350~400万円台)で価格推移。横ばいのBOX展開で、短期的に下落基調、中長期で上昇基調を予想。基本は弱気姿勢で短期売り回転、もしくは様子見です。

 テクニカル分析では、移動平均MA21を価格が下回り、短中期のMAはデスクロスの手前で、売りシグナルが点灯。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンはMAに向けて下降していることから売りシグナルの気配。短中長期ともに下落シグナルの予兆が現れています。

 回帰分析の弱気範囲の下限370万円台に到達したことで、回帰分析の回帰直線500万円台への反発展開も予想されます。フィボナッチ分析から520~630万円台の押し目の水準が一旦の上値目途となります。300万円台に突入すれば下落加速で200万円台が視野に入ります。サイクル&リズム分析ではローソク足は陽線2から3本、陰線2から3本リズムから、BOX形成になりながら、再度下落を試す値動きです。フォーメーション分析は下降フラッグを形成中です。

 オシレーター系のクラシックRSI(相対力指数)は40付近推移、スローストキャスティクスは12付近推移、価格推移からオシレーター系の売り継続シグナル。下値を試したい推移です。見方を変えると相場過熱が落ち着き、再び上昇再開へのエネルギーを貯めているとも考えられます。

 注目度・先行性を測る出来高は低下から増加傾向、売買意欲が強いです。価格帯別出来高から下値320~350万円台までの調整をサポートする支持帯を形成しています。ブレイクダウンした場合200万円台までの下落が予測されます。当面、出来高分析からはBOXシグナルが点灯しています。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオは弱気の下落基調です。直近は300~400万円台のBOX価格推移で足場を固め、フィボナッチ分析などから示唆される「下落の目途340万円台」を割り込む展開となれば、200万円台に向けた展開もありえます。

 強気のカウンターシナリオとして、上値470万円台を超える展開になれば520~630万円台へ反発する可能性も考えられます。

 グローバルマーケットは主要中央銀行のテーパリング姿勢から、市場局面の変化を迎え、ドルは長期的なBOX見通しから他市場への関心が高まっているため、ビットコインのボラティリティは低下傾向と判断できます。

 短期売り回転、長期の買い目ですが、ビットコイン安の継続サインとして、ドル、ゴールドの動向を注視してゆきます。これまでのビットコイン上昇トレンドは他市場の流動性低下から形成された側面もあります。テーパリングを迎え、他市場へ資産が向かう局面で、市場心理は終局への準備を開始する可能性もあります。

イーサリアム円

 イーサリアム円は回帰分析では弱気範囲(18~23万円)の付近で価格推移しながら、ビットコインの下落⇒アルトコイン下落波及の展開を受け、短期は弱気姿勢の下落基調、中長期の反発再開が予想されます。

 テクニカル分析では、移動平均MA21など短中期のMAは下向きにデスクロスで売りシグナル。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンはMA21への下降線を描き、売りシグナル手前です。

 ローソク足は週足に目を向けると陽線1~2本、陰線2~3本とリズムの短期調整を形成、BOX形成となり値探りです。サイクル&リズム分析からは、下落リズムが再開すると思われ、下値18万円台をブレイクで下落の加速を想定します。

 相場過熱への調整シナリオとして、フィボナッチ分析から下値18万台、上値22万円台、25万円台がトレンド形成の判断目途になります。回帰分析からは下限18万円台までは買い目の目途、もしブレイクダウンするなら下落加速が考えられます。フォーメーション分析では下降フラッグを形成中になり、弱気売りシグナルになります。

 オシレーター系のクラシックRSIは49台付近で推移、売り継続シグナル、スローストキャスティクスは20付近で推移しており、売り継続シグナルです。オシレーター系は全体に売り継続シグナルとして捉えることができます。見方を変えれば、売り過熱から上昇再開エネルギーを貯めているとも考えられます。ただし、オシレーターの推移は、買い条件への転換が当面は難しいと思わせる典型的なパターンです。

 注目度・先行性を測る出来高は、低下傾向。価格帯別出来高から17~21万円台が価格支持帯となり、これを割り込む展開になれば14万円台が下落目途です。出来高分析からは買い支えのシグナルが強まっています。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオは下落基調で、17~21万円±100円で推移しながら値探りです。フィボナッチ分析から17~20万円を割りこみ下値ブレイクとなれば、さらに13~17万円まで割り込む可能性を想定です。

 強気カウンターシナリオは上値23、25、28万円台を超えての展開になると、上値目途はフィボナッチ分析などから、30万円±100円、32万円±100円、37万円±100円へ向かう想定です。

 市場全体の新しい組み換え、テーパリング、夏枯れも意識が始まっているため、短期売り回転、長期は買い目姿勢でいいでしょう。

リップル円

 リップル円は回帰分析の強気範囲(60~70円)の付近で価格推移。短期は下落基調、中期は上昇目線です。BOX形成となり横ばい推移、弱気の価格推移を予想しています。

 テクニカル分析では、価格は移動平均MA21などで下落シグナルが点灯しています。短期MAが下降線から売りシグナルです。一目均衡表(イギリス&アメリカのスタイルで分析)の遅行スパンは雲、短中期MAは下降線を描き、売りシグナル点灯です。

 ローソク足は陰線、陽線約1~2本、陰線2~3本のBOX形成から下落再開の気配です。サイクル&リズム分析ではサイクルからも下値展開が意識されます。フィボナッチ分析から、下値60±1円が転換目途と考えられます。ブレイクダウンした場合20~30円までの下落加速が想定されます。フォーメーション分析から、下降フラッグを形成中から、売り継続シグナル気配です。

 オシレーター系のクラシックRSIは45付近で推移、売り継続シグナル、スローストキャスティクスは11付近で推移から売り継続シグナルです。オシレーター系から売り継続シグナルとして判断できます。見方を変えれば、買い転換へのエネルギーを貯めているとも考えらえますが、買い条件が揃うのは難しい状況です。

 注目度・先行性を測る出来高はやや増加傾向で売買動向の変化を意識されます。価格帯別出来高から50~70円台までサポート目安となり、下値50円台を抜けると、20円台が視野になり、急落展開には警戒です。出来高分析からは買いの支持が集まっている印象で、下値が固まる気配です。

 これらのテクニカル分析から、今後の展開予想をまとめると、メインシナリオは弱気の下落基調となり、フィボナッチ分析などから、60±1円を割り込む展開になれば、急落シナリオに移行、次なる下値目途は50円台で、これを割り込めば一気に20円台へ崩落するシナリオも意識されます。

 強気のカウンターシナリオも見ておきましょう。上値目途に、80±1円を超え、88±1円への展開になれば上昇基調となり、フィボナッチ分析から118±1円台 140±1円台 168±1円台に向かうイメージです。

 テーパリングが意識された相場は2013年以来です。市場変化を見極め、短期は回転売り、長期は買い目で考えています。そのほか、新しい銘柄選定に注力をしていいと思っています。夏枯れ相場も意識しながら、下半期への備えをするといいでしょう。

Author

天空の狐

天空の狐

ALTS investor Media 編集部 IFTA国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト、ESTA名誉会員(日本人で唯一)、ヘンリー・ビジネス・スクール ヘッジファンドプログラム修了。PythonMT4・MT5自動売買&裁量Aiトレーダー。ドイツ企業INTALUS.日本代表を経て、ドイツ金融アルゴリズムTradesignal日本代表に。テクニカル分析やアルゴリズム・ストラテジー開発。ヘンリー・ビジネス・スクールヘッジファンド・プログラムのアドバイザーを従事。ブログ「天空の狐 ビットコイン&グローバルマーケット」、マネーポストWEB執筆中。Twitter:@firmamentfox

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